1996 Fiscal Year Annual Research Report
卵胞発育・成熟および排卵における卵巣内局所因子の調節機構とその生理的意義
Project/Area Number |
07457393
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Research Institution | Keio University School of Medicine |
Principal Investigator |
吉村 泰典 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10129736)
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Keywords | 卵胞発育 / 排卵 / 卵成熟 / アンギオテンシンII / レニン / IGF-I / IGFBP |
Research Abstract |
ヒト卵胞液中には、分子量順に、糖鎖の違いからdoubletとして観察されるIGFBP-3(44〜40kD)、IGFBP-2(34kD)、糖鎖のついたIGFBP-4(28kD)、非糖鎖BP-4(24kD)がligand blotにより同定され、androstenedione/E_2比の高い閉鎖卵胞では、健常卵胞ではみられないBP-4が検出された。E_2優位卵胞におけるIGFBP総量の減少及びその発育段階によりIGFBP動態に差が認められることより、ヒトにおいてはIGFBPによる卵胞発育調節の可能性が考えられた。 ヒトやラット顆粒膜細胞及び家兎卵巣には、高親和性のIFG受容体が存在し、その結合活性はIGF-I>IGF-II>インスリンの順であったことより、タイプI受容体と推定された。さらにACLによって認められたIGFタイプI受容体のαサブユニットに相当する135kDのバンドはタイプI受容体に対するモノクロナール抗体であるα-IR3やIGF-I投与によって用量反応性に抑制された。このことより、卵巣内とくに顆粒膜細胞には、IGFタイプI受容体が存在し、卵巣内で生合成されたIGF-Iはparacrine・autocrine機構を介して卵胞発育・卵成熟を促進するものと考えられた。 下垂体除去後、DES処理した未成熟ラットより採取した顆粒膜細胞の培養系においては、FSH存在下でのP・E_2産生は、IGF-I投与により用量反応性に増加した。このIGF-Iによって刺激されたE_2産生は、IGFBP-3及びBP-1の同時投与により用量反応性に抑制された。これらのIGFBPs自体は、顆粒膜細胞のE_2基礎分泌に影響を与えなかったことから、IGFBPsは直接的にaromatase活性に作用するのではなく、IGFBPによりIGF-Iの作用が中和され、E_2産生が抑制されたものと推論された。 家兎卵巣内には高親和性(Kd=1.58×10^<-9>M)のAngII受容体が存在した。AngIIの選択的拮抗剤であるAT_1拮抗剤(CV-11974),AT_2拮抗剤(PD123319)を用いたautoradiographyでは、顆粒膜細胞には主にAT_2受容体、莢膜細胞及び間質にはAT_1受容体が存在した。またラット胎児組織と同様、卵巣内にはAT2受容体の3.5kbのmRNAが認められたが、子宮ではmRNAの発現は確認されなかった。AngIIの卵巣内E_2・PG産生、卵胞発育・排卵及び卵成熟誘起作用は、CV-11974ではなくPD123319投与により有意に抑制された。卵巣内には少なくとも2種類のAngII受容体が存在し、卵巣内で生合成されたAngIIは、主に顆粒膜細胞に存在するAT_2受容体を介して卵胞発育・卵成熟・排卵を促進すると考えられた。 卵巣内IGF-IGFBP系及びRASは、卵胞発育・排卵過程で相互作用を有しており、Gnサージ後の排卵に至る最終的な卵胞発育では、卵胞内でのIGF-I生合成が高まることによって、PA及びプラスミン活性が亢進する。このセリンプロテアーゼの上昇は、一方ではIGFBPの消化断片化に伴う内因性IGF-I活性の亢進につながり、他方では卵胞内RASの誘導・活性化を促す。その結果、RASの生理活性の中心であるAngIIが亢進し、卵胞発育・排卵に至るものと考えられた。
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[Publications] Yoshimura Y et al.: "Insulin-like growth factor binding protein-3 inhibits gonadotropin-induced ovulation,oocyte maturation,and steroidogenesis in rabbit ovary" Endocrinology. 137. 438-446 (1996)
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[Publications] Shiokawa S,Yoshimura Y et al.: "Function of β_1 integrins on human decidual cells during implantation" Biol Reprod. 54. 745-752 (1996)
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[Publications] Yoshimura Y et al.: "Angiotensin II induces ovulation and oocyte maturation in rabbit ovaries via the AT_2 receptor subtype" Endocrinology. 137. 1204-1211 (1996)
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[Publications] Shiokawa S,Yoshimura Y et al.: "Expression of β_1 integrins in human endometrial stromal and decidual cells" J Clin Endocrinol Metab. 81. 1533-1540 (1996)
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[Publications] Yoshimura Y et al.: "Effects of insulin-like growth factor-I on follicle growth,oocyte maturation,and ovarian steroidogenesis and plasminogen activator activity in the rabbit" Biol Reprod. 55. 152-160 (1996)
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[Publications] Yoshimura Y et al.: "Interaction between insulin-like growth factor-I(IGF-I) and the renin-angiotensin system in follicular growth and ovulation" J Cline Invest. 98. 308-316 (1996)
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[Publications] Yoshimura Y,Tsutsumi O: "Tokyo Conference of Reproductive Physiology III Sex Differentiation and Ovarian Function" S.Karger Medical and Scientific Publishers,Basel, 52 (1996)