1995 Fiscal Year Annual Research Report
骨芽細胞のチロシンキナーゼ遺伝子機能を制御する転写因子NF-κBに関する研究
Project/Area Number |
07457436
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松本 章 北海道大学, 歯学部, 教授 (40064365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 善隆 北海道大学, 歯学部, 助手 (30230816)
鈴木 邦明 北海道大学, 歯学部, 助教授 (40133748)
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Keywords | 転写因子 / NF-κB / 骨芽細胞様MC3T3-E1細胞 / チロシンキナーゼ / 低カルシウム環境 / ゲルシフト分析 |
Research Abstract |
我々は歯周病の歯槽骨崩壊の予防・診断・治療を遺伝子レベルで行うべく、ここ30年間に亘って研究を進めている。我々はこの歯槽骨崩壊がin vivoの実験で低Ca食飼育ラットでCa代謝を司るPTH、CT、Vit D_3の代謝異常により器官、細胞の環境が低Ca状態に陥ると発症することに注目した。以来この推論を確かめるために、in vitro実験系に移った。 まず我々は生後1日齡のラットの大腿骨を低Ca培養液で培養して、器官の異常の発生の有無を調べたところ、確かに全長の増大、骨頭部の肥大、アルカリ性ホスファターゼ活性の亢進、コラーゲン合成の減退など異常の発生していることを認めた。次に、ラット胎生頭蓋骨由来の骨形成系細胞を同様に低Ca培養液で培養し、その機能に異常の発生しているか否かを調べた。大腿骨でみられたアルカリ性ホスファターゼ亢進については骨形成系細胞においても初期にその亢進を認めた。しかし、後期の石灰化期以後は抑制されていることを認めた。この酵素活性の活動に関わる細胞内情報伝達系にも影響があることは当然に推測できたので、その多くの成分のうち総Ca、[Ca^<2+>]i、IP_3、PKCなどの動向をみた。低Ca培養液で培養した骨形成系細胞では総Ca量は減少し、IP3量も減少し、PKC活性も減退していることを認めた。この蛋白質の形質発現をコードしているのは核内遺伝子なので、この遺伝子の機能にも異常が生じているに相違ないと推測し、細胞の成長、発育に機能しているc-fos遺伝子に着目し、これの転写活性の挙動を低Ca環境下培養骨芽細胞様MC3T3-E1細胞において調べた。MC3T3-E1細胞をFBS、EGFで刺激すると、c-fos mRNA発現の程度が上昇していることが示され、遺伝子の機能にも変化の生じていることが見出された。我々は、この遺伝子の機能のDNA情報伝達に変容のあることを認めたので、次にこの遺伝子の情報をmRNAに伝達するときに働く遺伝子転写調節因子のプロモーター、エンハンサー領域における調節機構を調べることが重要であると考えた。遺伝子転写調節因子には多数のものがあるが、我々は哺乳類一般の細胞にみられるNF-κB、cyclic AMP依存性のA Kinaseに関わるCREB、サイトカインの制御に参加しているOct-1について、低Ca培養液で培養してMC3T3-E1細胞についてGel Shift Assayで調べた。その結果、次の事実が平成8年度において見出された。 1、骨芽細胞様MC3T3-E1細胞にNF-κB、CREB、Oct-1の遺伝子転写調節因子が認められた。 2、骨芽細胞様MC3T3-E1細胞の 1)増殖期(3日間培養)CREBに異常がある。NF-κB、Oct-1には活性度に変化がありそうである。 2)分化期(17日間培養)CREBに異常がある。NF-κB、Oct-1にも変化がありそうである。 3)石灰化期(30日間培養)CREBに異常がある。NF-κB、Oct-1にも活性度に差がありそうである。 以上のように平成8年度においては核内遺伝子転写因子の機能に異常の発生していることが見出された。特にCREBのバンドにシフトが見られ、確かにその機能に変化の生じていることが見出された。NF-κB、Oct-1にも何等かの機能変化の生じていることも窺えた。低Ca環境は骨芽細胞にとって正常の機能を維持するうえで不適切な環境なので、このように遺伝子転写調節領域においても対応、変化の生じていることが考えられる。 今後は、この遺伝子転写調節因子の機能異常のメカニズムを解明するために、curcurin(NF-κB阻害剤)などを用いてNF-κBの挙動をみたり、これらの転写調節因子の抗体を用いて免疫沈降を行い、Western Blot Analysisを行って、それらの因子が確実に作動していることを確かめることが必要である。また、我々が見出したFBS、EGF刺激後のc-fos mRNA発現の増強と、これら遺伝子転写調節因子との関連を調べることがその現象解析の上で重要である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Yosjimura Y.,Hisada Y.,Suzuki K.,Deyama Y.and Matsumoto A.: "Effect of a low-calcium environment on alkaline phosphatase activity in embryonic rat calvarial bone cells in culture." Archives of oral Biology. (印刷中).
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[Publications] 小椋亮、松本章他: "歯槽骨吸収の病因と治療に関する基礎、臨床領域の共同研究" 平成2〜4年度文部省科学研究費補助金(総合研究A)研究成果報告書. (1995)
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[Publications] Suzuki K.,Okamoto T., Yoshimura Y.,Deyama Y.,Hisada Y.and Matsumoto A.: "Phosphotyrosyl protein phosphatase-like activity of a clonal osteoblastic cell line(MC3T3-E1 cell)" Archives of oral Biology. 40. 825-830 (1995)
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[Publications] Deyama Y.,Matsumoto A.,Yoshimura Y.and Suzuki K.: "The effect of calcium ion on the c-fos mRNA expression in the clonal osteoblastic MC3T3-E1 cells derived from mouse calvaria." Oral Therapeutics and pharmacology. 14. 132-137 (1995)
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[Publications] Deyama Y.,Matsumoto A.,Yoshimura Y.,Suzuki K.and Hisada Y.: "The relation between c-fos mRNA expression and protein Kinase C activity in the MC3T3-E1 cells under a low calcium environment as a periodontal disease model." Oral Therapeutics and pharmacology. 14. 53-58 (1995)
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[Publications] Matsumoto A.,Deyama Y.,Yoshimura Y.,Suzuki K.and Hisada Y.: "The changes c-fos mRNA expression in the osteoblastic MC3T3-E1 cells with the treatment of EGF and TPA under a low-calcium environment." Hokkaido Journal Dental Science. 16. 14-16 (1995)