1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト歯髄の器官培養系における象牙芽細胞の分化の機構について
Project/Area Number |
07457452
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
荒木 孝二 東京医科歯科大学, 歯学部, 講師 (70167998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 則宏 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (70272606)
須田 英明 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (00114760)
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Keywords | ヒト歯髄細胞 / 器官培養 / 象牙芽細胞 / 分化機構 / サイトカイン / mRNA / LPS / 歯科用セメント |
Research Abstract |
平成8年度に引き続きヒト歯髄由来の継代培養細胞およびヒト歯髄の器官培養を用いて象牙芽細胞の分化機構のを検索すると共に,ラット歯髄由来の株細胞(RPC-C2A)を用いて毒性のない濃度の歯科用セメント抽出液で刺激したときの細胞増殖活性の変化を調べ、以下の知見を得た。 1.平成8年度と同様にヒト歯髄由来の継代培養細胞を飢餓培養し、増殖休止期に保ったのち血清で刺激し細胞増殖を再開させる実験系で、所定の経過時間後に細胞毒性のない濃度のセメント抽出液を添加し細胞増殖の変化を見たところ、コントロールに比較して細胞増殖が減少することが確認された。しかし,ヒト歯髄由来培養細胞では,継代が進む毎にその反応にばらちつきが強く見られてきたので,ラット歯髄由来の株細胞(RPC-C2A)を用いて,同様の実験を行った。この際,増殖の刺激には,上皮増殖因子であるEGFを用いたところ,歯科用セメントの種類によって,細胞毒性がほとんどない濃度においてもEGFの増殖活性を強く抑制することが分かった。これらの刺激は,細胞増殖のコントロールには成り得るが,細胞分化の刺激には成りにくいことが判明した。 2.平成8年度と同様にヒト歯髄の器官培養の象牙芽細胞への分化に関する様々な条件設定を探ってみた。コラーゲンゲルを細胞外気質として用いた場合,血清濃度の変化,TGF-β1の添加濃度を変化させても細胞の分化より増殖の方向へ誘導されることが多かった。寒天を変わりに細胞外気質として用いた場合もコラーゲンゲルとほとんど変わらなかった。また,Osteoblastの分化誘導に関与すると言われているBMPを投与し,TGF-β1との比較を行ったが,どちらもコントロールとほとんど差が見られなかった。以上より,現在までのヒト歯髄器官培養方法では,明白な象牙芽細胞への分化の証拠は得られることが出来ていないが,分化の方向へ向かっている可能性は否定できないので,今後はまずその確認方法の検討から考えている必要があると思われる。
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