Research Abstract |
白金鉄系磁石合金の鋳造性及び磁気特性の向上を目的に,白金鉄二元合金に,シリコンとニオブをそれぞれ添加し,様々な組成の合金について鋳造後の表面粗さ,磁気特性,吸引力に及ぼす影響を調べた結果,以下のことが分かった. 1.シリコンの添加は,鋳造体の表面粗さを向上させ,鋳造後の熱処理時間を短縮することが分かった.しかし,0.1at%以上の添加は,吸引力を低下させると考えられる.これは,鋳造前後でのシリコンの消失はほとんどなく,結晶粒界に沿ってシリコン濃度の高い部分が存在し,粒界強度が低下し,粒界割れが発生するためと考えられる. 2.0.5から0.75at%のニオブの添加は,鋳造体の磁気特性の向上に有効であった. また,吸引力の向上を目的に,円板状試料とクラウンタイプ試料を用いて,その着磁方法を,厚さ(歯冠軸)方向,直径(歯冠軸に垂直)方向,面内(咬合面内)4極と変えて吸引力の相違を検討した結果, 1.円板状試料の吸引力は,4極着磁にすると,大きな吸引力を示す傾向が見られ,高いものでは1100gfを越える試料も見られた. 2.クラウンタイプ試料の吸引力は,歯冠軸方向で約600gf,4極で約100gfと円板状試料の結果とは逆の結果を示した.これは,4極着磁では,着磁機の能力の問題から,試料の内面まで磁場が通なかったからであり,着磁機の問題が解決されれば,吸引力は大きくなるものと考えられる.いずれにしろ,単純型のクラウン形態ではあるが600gfという値は,可撤式クラウンブリッジの維磁力として臨床応用できる可能性があると考えられる. 今後は,ニオブの添加量を0.5から0.75at%,シリコンの添加量を0.1at%未満とし,最適な添加量を検討し,クラウンタイプ試料の適合精度や専用着磁機の開発と吸引力におよぼす影響などを調べるとともに,臨床応用に際しての様々な制限に対しても検討を進めて行きたい.
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