1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07457581
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 聰 新潟大学, 脳研究所, 助手 (90202663)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊西 敏郎 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40018601)
|
Keywords | 亜急性硬化性全脳炎 / Subacute sclerosing panencephalitis / 潜在感染 / 遺伝子変異 |
Research Abstract |
当初の研究計画に沿って、Reverse Transcription-coupled Polymerase Chain Reaction(RT-PCR)法を用いてSSPEウイルス遺伝子の塩基配列を解析した。SSPE剖検例の凍結保存組織よりtotal RNAを抽出し、reverse transcriptase(RT)を用いてcDNAを作成した。そのcDNAをtemplateとし、PCR法によりSSPEウイルス遺伝子を増幅した。Primerとして既知の麻疹ウイルスEdmonston株の塩基配列を合成して用いた。麻疹ウイルス遺伝子には3'側(上流)からNP,P,M,F,H,Lの6種の構成蛋白がコードされており、約6.6kbのL遺伝子、約2.4kbのF遺伝子以外は2kb以下の長さである。L遺伝子以外はその全長を増幅できるようにprimerを設定した。L遺伝子では1kb程度のPCR産物が生成されるように設定した。こうして増幅したPCR産物を電気泳動により分離し精製した後、pUC118がベクターにクローニングし、dideoxy法にて塩基配列を決定した。 既にMatrix protein(M)遺伝子についての解析は終了している。M遺伝子には高率に塩基置換が証明された。新たに終止コドンが生じており、そのM蛋白は異常に短いものと推定された。採取した数クローン中には基本的に同一の塩基置換が認められたが、クローン間で1〜4塩基の相違も見られ、持続感染中に患者脳組織内で遺伝子変異が進行する可能性が示唆された。そのため、脳内の異なった部位でのウイルス変異の相違を知るために数カ所からRNAを追加採取し、現在塩基配列を解析中である。こうした解析はSSPEウイルス持続感染を考える上で重要と思われる。 生鮮組織が得られた1剖検例を中心に検索を行っているが、我々の収集保存してきた症例の多くはフォルマリン固定パラフィン包埋組織である。そうした材料からの検索を可能とするために、パラフィン切片からの核酸抽出・RT-PCRを試みている。この方法が実用化されれば、極めて稀な疾患であるSSPE症例において、症例ごとのウイルス遺伝子変異の比較解析に有用と考えられる。生鮮組織の収集は今後も引き続き継続する予定である。 同様の方法を用いて他の遺伝子についても解析が進行しており、研究期間内にSSPEウイルスの全塩基配列が決定され、ウイルス構成蛋白がSSPE脳内で果たしている役割を検討できるものと考えられる。
|
-
[Publications] 阿部 聰: "Intravascular malignant lymphomatosisにおける腫瘍細胞の解析" Clinical Neurology. (in press). (1996)
-
[Publications] 阿部 聰: "Intravascular malignant lymphomatosisにおける免疫グロブリン再構成遺伝子の解析" Neuropathology. (in press). (1996)
-
[Publications] 阿部 聰: "Intravascular malignant lymphomatosis:免疫グロブリン再構成遺伝子の解析" 新潟医学会雑誌. (in press). (1996)
-
[Publications] Tanuma N: "Pretreatment with T cell receptor peptides using a conventional immunization protocol does not induce effective protection against autoimmune encephalitis" Cellular Immunology. (in press). (1996)
-
[Publications] 遠藤純男: "EBウイルス感染により得られた脳原発悪性リンパ腫由来細胞の特性" Neuropathology. (in press). (1996)
-
[Publications] 宮下 光太郎: "Intravascular malignant lymphomatosisの末梢血による診断と治療効果判定の可能性" Clinical Neurology. (in press). (1996)