| Research Abstract |
本研究では,人間の教師と学習者のコミュニケーションを仲立ちする装置として知的教育システムを捉え,教師が有する個別教育に関する知識を引き出す方法について検討した.通常,自らの知識を引き出して記述することは容易なことではない.そこで,知識を記述する基本的な語彙(オントロジー)をあらかじめ整理し,これを教師に利用させるアプローチをとった.このアプローチでは,オントロジーが教師にとって理解可能であるとともに,学習者の学習過程を適切に表現できることが大切となる.そこで,本研究では,力学とプログラミングの問題を具体的な題材として,問題の記述ならびに学習過程のモデル化を行い,力学問題では系の振舞いや制約関係などを記述する語彙を抽出した.また,プログラミング問題ではプログラム仕様によって期待されるプログラムの動作を記述する語彙を整理した.次に,これらのオントロジーを用いて,学習者に対する教授を展開するための知識を記述する枠組みを与えた.例えば,問題演習において,学習者が解ける問題と解けない問題との差異をオントロジーで表現し,それを説明したり,あるいは問題間の差異が小さくなるように問題系列を決めて学習者に演習させるといった,知識記述のアウトラインを提供した。このように記述した教授知識については,すでに知識ベース化し,計算機システムとして実装している.以上の研究成果に関しては,人工知能と教育工学関連の国際会議ならびに国内の関連学会において発表し,あるいは発表を予定している.
また,本研究では,以上のアプローチにしたがい,複数の学習者が協調しながら学習を進めるグループ学習において,協調的な学習を適切に誘導する上で必要な教授知識の抽出を試みた.来年度,個別教育の教授知識とともに,このグループ学習のための教授知識についても知識ベース化を行い,評価する予定である.
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