1996 Fiscal Year Annual Research Report
塩基配列特異性に多様性を示す基本転写因子の構造研究
Project/Area Number |
07458171
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
箱嶋 敏雄 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (00164773)
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Keywords | 転写因子 / 基本転写因子 / 蛋白質 / DNA / 複合体 / X線 / 構造生物学 |
Research Abstract |
大腸菌由来のσ因子、σ28とσ38及びσ70の結晶化を集中的に試みると共に、溶液中での物理化学的性質やプロモータDNAとの相互作用を調べた。蛍光偏光度測定と表面プラズモン共鳴測定によるプロモータDNAへの結合実験では、σ28とσ38はプロモータDNAオリゴマーに結合することが可能で、しかも、-10領域に強く結合することが分かった。また、-35領域の上流側の突出配列を切り込むことによって、-10と一35領域を含むプロモータDNAオリゴマーとの結合を増強できることを示した。これらのDNAとσ因子との複合体の結晶作成には成功していない。一方、種々の条件検討の結果、全長のσ38単体の結晶を得ることに成功した。中性付近で得られるこの結晶は、超高輝度X線発生装置と点収束光学系、迅速な自動測定が可能な広い受光面をもつ回折計、及び試料低温装置からなるデータ収集系を用いた予備的実験から、六方(あるいは三方)晶系に属し、格子定数は、a=b=61.68Å,c=356.46Åであった。0.20mm x 0.070mm x 0.070mmの小型の六角柱状の結晶であったが、分解能5.5Åまでの回折を与えた。 更に、基本転写因子に働きかける転写因子類の構造研究も平行して行った。出芽酵母の転写調節因子PHO4のDNA結合ドメインPHO4(63)とDNAとの複合体、のデータ収集及び構造解析を行った。この結晶は結晶中の溶媒含量が非常に高く、分解能が低い、モザイク性が高い、あるいは不安定である等の蛋白質/DNA複合体結晶の問題点のほとんどを含んでいたが、特に、実験室レベルであっても高い輝度のX線ビームを用いることによるデータの質の向上を図ることに成功し、構造決定した。また、低温装置による結晶寿命と分解能の改善を図ることにより、インターフェロン関連遺伝子の転写因子の一つであるlRF-2のDNA結合ドメインとDNAとの複合体結晶と分裂酵母由来の転写因子PaplとDNAとの複合体結晶、更に、蛋白質結晶であるが上記の困難な問題をもつDNA複製関連遺伝制御因子DREFのDNA結合ドメインとGSTとの融合蛋白質のデータ収集と構造解析を推進した。これらについては現在構造解析中である。
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[Publications] A.Toumoto: "Preliminary X-ray studies on a new crystal form of PHO4-DNA complex." Acta Crystallogr.D53・1. 103-104 (1997)
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[Publications] T.Shimizu: "Crystal structure of PHO4-DNA complex." EMBO J.16・(印刷中). (1997)
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[Publications] 箱嶋敏雄: "蛋白質/DNA複合体の構造研究" SR科学技術情報. 6・1. 3-8 (1996)
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[Publications] 箱嶋敏雄: "蛋白質による核酸塩基識別における特異的相互作用と非特異位的相互作用" 研究成果報告集「薬学の進歩13」. 13. 73-84 (1997)
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[Publications] 箱嶋敏雄: "転写因子とその構造" 臨床医. 23・5(印刷中). (1997)
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[Publications] 箱嶋敏雄: "転写因子におけるDNA-蛋白質相互作用" 日本結晶学会誌. (印刷中). (1997)
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[Publications] 箱嶋敏雄: "シリーズ・ニューバイオフィジックス3「構造生物学とその解析法」" 核酸及び核酸・蛋白質複合体(印刷中), (1997)