1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07458207
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Research Institution | Okazaki National Institutes |
Principal Investigator |
池中 一裕 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (00144527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 広子 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (40271499)
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Keywords | ミエリンプロテオリピド蛋白質 / アンチセンスオリゴヌクレオチド / ホスホロチオエ-ト化 / 遺伝子治療 / 脱髄 / ミエリン |
Research Abstract |
ミエリン膜は神経軸索を取り巻く密な膜構造であり、跳躍伝導を起こすことによって、飛躍的に神経伝導速度を上昇させていることはよく知られている。しかし、一旦形成されたミエリンが無くなる疾患においては神経伝導速度がどうなるのか、正確には検討されていない。動物モデルにおいて脱髄を惹起させるにはいろいろな方法があるが、どの方法も炎症反応を伴うものであり、神経軸索に与える影響が無視できないものであった。われわれは自発的に速やかに脱髄を引き起こすマウス(PLPトランスジェニックマウス)を作成したので、今回はこの脱髄マウスにおける神経伝達速度を測定し、跳躍伝導を行っている有髄線維に脱髄が起きた場合の影響について検討した。 今までマウスを用いて神経伝達速度を測定するには、脊髄を生体外に取り出し、灌流液中で行う方法が用いられていた。しかし、生体においてはマウスの死とともに神経伝達が行われなくなるので、現行法では正確な神経伝達速度を測定しているとは考えがたい。そこで、われわれは深麻酔下にマウスにラミネクトミ-を施し、生きたまま神経伝達速度を測定する系を確立した。 PLPトランスジェニックマウスは生後5、6ヶ月から急速かつ広範な中枢神経系の脱髄を起こす。これに伴い後肢の動きが緩慢になり、その後麻痺する。われわれは麻酔症状の進んだ8ヶ月のマウスを用いて実験を行った。同腹の野性型マウス脊髄後索では約12m/sの速さの神経伝達が計測された。しかし、脱髄を起こしているマウスでは神経伝達がブロックされていた。さらに、麻痺の進行したマウスでは軸索の変性が認められた。この変性は脱髄直後では認められず、神経伝達のブロックにより2次的に起こったと考えられる。 多発性硬化症(MS)においては神経症状が増悪、寛解を繰り返すうちにどんどん進行する。増悪、寛解は脱髄と髄鞘再生に対応し、進行は軸索変性に対応すると考えられている。今回の実験結果により脱髄時には神経伝達速度が低くなるだけでなく、ブロックのかかることが明らかとなり、軸索は一旦ミエリン形成を受けると伝導そのものがミエリン依存的になることを示した。また、神経伝達のブロックが長くなると軸索変性にまで至ることも示唆された。MSにおいては症状の進行を如何に止めるかが重要な課題であり、今後、このマウスを用いて脱髄時における軸索変性回避が可能かどうか検討したい。
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[Publications] Inoue,Y.: "Cell death of oliogodendrocytes or demyelination induced by overepression of proteolipid protein depending on expressed gene dosage." Neurosci.Res.25. 161-172 (1996)
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[Publications] Kagawa,T.: "Localization of mRNA for UDP-galactose : ceramide galactosyltransferase in the brain during mouse development." Dev.Neurosci.18. 309-318 (1996)
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[Publications] Yamaguchi,Y.: "Myelin proteolipid protein (PLP),but not DM-20,is an inositol hexakisphosphate binding protein." J.Biol.Chem.271. 27838-27846 (1996)
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[Publications] Morita,N.: "Astrocytic lineage analysis by detection of GFAP promoter activity in vitro." Dev.Neurosci.(in press).
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[Publications] Baba,H.: "GFAP gene expression during development of astrocyte." Dev.Neurosci.(in press).
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[Publications] Tamura,M.: "Targeted killing of migrating glioma cells by injection of HTK-modified glioma cells." Human Gene Therapy.(in press).
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[Publications] 鹿川哲史: "CLINICAL NEUROSCIENCE" (株)中外医学社, 246-247 (1996)
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[Publications] 池中一裕: "ブレインサイエンス" (株)厚生社, 273-280 (1996)