1997 Fiscal Year Annual Research Report
複雑系としての脳の全体制御機構に関する生体・生理工学的研究
Project/Area Number |
07459003
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 光璋 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (40004618)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 光之 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (20172265)
赤池 紀生 九州大学, 医学部, 教授 (30040182)
|
Keywords | 1 / 5 ゆらぎ / 複雑系 / 外側膝状体 / レム睡眠 / ニューロン活動 / ニューラルネットワークモデル / 夢見 |
Research Abstract |
自律分散的に働き、複雑系の代表と考えられる"脳"の全体調節メカニズムを、生体・生理工学的手法により解明することを目的とする。このために今年度行った研究成果を以下に要約する。 (1)視覚系の中継核で調節系からの制御を集中的に受けている外側膝状体ニューロン活動を記録し、そのノンレムからレム睡眠への変化に伴うダイナミクスの遷移現象を調べた。このニュウロンはバーストを基本とする発火パターンを有している点で特徴的であったが、活動時系列のスペクトル密度が平坦から1/fへと遷移する現象は確認された。この結果は「白色から1/fへのダイナミクスの遷移現象は伝導路系一般に見出されるものである」とする我々の仮説を支持するものであった。また、調節系の神経伝達物質であるセロトニンの脳内濃度をマイクロダイアリシス法により定量し、そのニューロン活動ダイナミクスとの対応関係を明らかにするために、高速液体クロマトグラフのカラムの長さ、移動相の組成、酸化電位などの測定パラメータを最適化し、fmolオーダーの測定を可能にした。現在、in vivoでの測定が進行中である。 (2)ニューロン活動に上述のダイナミクスの遷移現象が現れるための条件を、神経回路網モデルのニューロンどおしの結合形態を、対称、非対称、疎結合と変化させて調べた。その結果、ニューロン活動が白色スペクトルを呈する徐波睡眠時には回路網からの入力よりは外的な入力の方が、1/fゆらぎを呈するレム睡眠時には逆に回路網からの入力がそれぞれ優位になることが重要であることが明らかになった。また、ニューロン活動のダイナミクスは、神経回路網の準安定性と、それに加わる外乱の時間構造の相互作用によっても変化することが示された。これらの結果は、全体的なバイアス制御のみならず、調節系ニューロン群が多様なやり方でダイナミクスの遷移現象に関わっていることを示唆しており、これまでのメカニズムの解釈を一般化したものとなっている。また、神経回路網の準安定的な振る舞いは夢見を支える生理学的な実体とも考えられ、その高次脳機能との関わりを知る上で重要な情報を提供している。
|
Research Products
(13 results)
-
[Publications] 山本光璋: "ネコ外側膝状体領域単一ニューロン活動ゆらぎに対するセロトニンの効果" 第20回日本神経科学大会予稿集. 2117- (1997)
-
[Publications] 山本光璋: "睡眠時の脳単一ニューロン活動の計測とそのダイナミクス遷移現象" 第20回日本神経科学大会予稿集. 2118- (1997)
-
[Publications] 山本光璋: "海馬ニューロン樹状突起における活動電位逆伝播のGABA性抑制入力による制御" 第20回日本神経科学大会予稿集. 131- (1997)
-
[Publications] 山本光璋: "ネコの睡眠-覚醒状態における海馬局所脳波の時変スペクトル解析" 電気関係学会東北支部連合大会予稿集. 252- (1997)
-
[Publications] 山本光璋: "ニューロンの樹状突起ダイナミクス計測システムの伝導特性解析" 電気関係学会東北支部連合大会予稿集. 253- (1997)
-
[Publications] M.Yamamoto: "Metastable Associative Network Models of Dream Sleep" Neural Networks. 10・7. 1289-1302 (1997)
-
[Publications] M.Yamamoto: "Thickness controls spatial cooperation of calcium-activated dynamics in neural dendrite system" IEICE Trans.Fundamentals.E80-A. 197-205 (1997)
-
[Publications] 山本光璋: "ニューロン樹状突起の能動性とその機能に関するモデル論的考察" 医用電子と生体工学. 35・3. 254-264 (1997)
-
[Publications] 山本光璋: "体性感覚野における神経回路網の自己組織化モデル" 信学技報. MBE97-100 (1997)
-
[Publications] M.Yamamoto: "Highre-order spectra of cluster point processes generating 1/5 fluctuations" Interdisciplinary Information Sciences. (in press).
-
[Publications] M.Yamamoto: "A possible mechanism of dynamics transition of central single newronal activity during sleep" Academic Press : Sleep and Sleep Disorders, 81-95 (1997)
-
[Publications] 山本光璋: "意識とゆらぎ" 脳科学の前線:サイエンス社, 209-217 (1997)
-
[Publications] M.Yamamoto: "Modeling and hypothesis on REM sleep" Rapid Eye Movement Sleep : Narosa Publishers (in press),