Research Abstract |
本研究の目的は,地理情報システムを用いて,図形情報と文字情報を双方向に検索できる遺構のデータベース・モデルを開発することにある。このため,平安京の条坊地割をその実例として取り上げ、遺構に関するデータの属性やその表記方法などについて模索し,最適なデータベースの構築を試みる。本年度は,基礎データの作成に時間を要し,データベースの実際的な運用には至らなかったが,以下のような成果を上げることができた。 背景画像の作成 平安京の条坊地割の正確な復原のために,縮尺1/2500の都市計画図をディジタイザで入力し,背景画像となるディジタル・マップを作成した。道路,建物,町界などを画層,色,線種を変えて取込んだ。 遺構データベースの作成 平安京の条坊地割に関連する遺構142件を抽出し,遺構のデータベースを作成した。遺構の図形情報は,国土座標に則って縮尺1/50の図から,遺構の種類ごとに画層と線種,線の色をかえて入力した。遺構の文字情報は遺構の種類ごとにテーブルを作成し,識別番号,時期,関連文献などの共通項目を設定した。井戸や溝などの遺構に特徴的な属性項目も個別に検討した。 文献データベースの作成 天皇の御幸路のような街路や,寺院,御所,邸宅,火災,地震,大風,洪水など,街区や街路に関するデータベースの構築を試みた。属性項目は識別番号,出典,記事内容,時期などを設定した。 システムの試験的運用 文献データベースの入力,抽出に時間を要し,今年度は地理情報システムの中で,文字情報と図形情報をリンクし,双方向に検索・表示できるシステムを構築するには至らなかった。 今後の課題 条坊地割の研究には高い精度のベクターデータは不可欠であるが,データ量が多い。目的や縮尺に応じてラスターデータとの組合わせや,Power Pointのような基本ソフトからの検索も次年度の検討課題である。
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