Research Abstract |
平成7年度の検討課題の成果に基づいて,平成8年度に実施した検討課題は,(1)複動動作ダイセットの組み立て・調整,(2)製作したダイセットを組み込んだ既設マルチ油圧プレス機による歯形部品の精密鍛造の実施,(3)実験に基づき発生する問題点の検討および試作ダイセットの再調整,(4)改良型分流鍛造技術の試作ダイセットへの組み込み,(5)効果的な分流鍛造技術資料の一層の蓄積である.(1)から(4)においては,既設油圧プレスのメインシリンダー部に上型歯形パンチ装着,エジェクター用油圧シリンダー部に下型歯形ダイ装着,上型歯形ダイ側方部に新規に2基の同期油圧シリンダーを増設した3動作任意可動のダイセットの組立を実施した.調整中,歯形滑合で不備が生じ,円滑動作のため,ダイセットフレーム構造の改造が必要とされた.そのため,計測システムをコントロールするためのコンピュータ(備品)購入は断念し,製作費(消耗品)へ転用した.そして,メインシリンダー部に圧力制御と位置制御,他のシリンダー部に位置制御のための検出器を装着して,各データーがレコーダーを介して処理できる計測システムを構築し,即時分流鍛造が実現できる加工装置の開発が実現できた.本装置による具体的精密鍛造の実施は型工具の破損を回避するため,モデル材として,工業用鈍鉛を用いて実施した.その結果,素材を型内に挿入して密閉鍛造を予備工程とした分流鍛造を実施し,製品を取り出すまでの全加工時間は容易に5秒以内であり,低い加工面圧比で精密鍛造できることを確かめた.今後は,この成果を基礎として,実用材への適用を展開していく.(5)については,第47回塑性加工連合講演会において,"分流方式による実用歯形製品の冷間精密型鍛造加工の研究:第4報内歯歯形部品への適用の可能性"と題して論文発表し,さらに,第5回中日精密鍛造学術会議(中国・西安),日本専門家招請加工技術ゼミナール(韓国・ソウル),第5回塑性加工国際会議(USA・コロンバス)などに出席し,分流鍛造技術に対する講演を実施し,関心を強く持たれた.特に,これまでの分流鍛造技術の組み立て方をさらに工夫すれば,対象とする歯車のモジュールの10倍を越える歯幅の製品も低面圧で精度良く冷間鍛造できることを明確にしており,この加工方式も考案した複動動作ダイセットに組み込むことが可能となっている.
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