Research Abstract |
2300K以上の融点を持つ二ケイ化モリブデン(以下,MoSi_2)は,その優れた高温耐酸化性から次世代の超高温材料として期待されている。しかし,MoSi_2はその高融点のために焼結や鋳造などにおいて処理温度が高くなるというプロセス上の欠点がある.さきに我々はMoSi_2よりも高温耐酸化性に優れたMo(Si,Al)_2を1000K以下の低温で合成する手法(DIP法)を開発した.この方法は,Siが飽和したAl融体中にMoを浸すことで,Mo(Si,Al)_2をMoの上にコーティングするといったものである。 このDIP法では,従来,処理を真空中で行っていた.本年度は大気中でも同様なDIP法が可能であることを確認した.大気中で作製した試料は,真空下で作製した試料と同様の組成や微細組織,成長速度を示した.大気中の処理では,Al-Si融体の表面にかなり厚いAl_2O_3皮膜が生成し保護性酸化皮膜として働くため,融体の更なる酸化や,Moの酸化を起こさないためであると考えられる.DIP法が大気中で可能であるということは,生産の自由度や製造コストを考えたときに極めて有利である. さらに,本年度はNb系のケイ化物へ,DIP法の適用を試みた.Nbの板材および線材をAl-Si融体中に浸したところ,NbSi_2と同様の結晶構造を有するNb(Si,Al)_2が反応生成皮膜として得られた.NbSi_2自体は,Nbが酸化するために,高温耐酸化性はあまり高くない.しかし,今回の研究で得られた試料はAlを固溶しているので,酸化皮膜としてAl_2O_3を形成すればかなり高い高温耐酸化性を示す可能性がある.また,今回の結果では,Mo(Si,Al)_2の場合とは異なり,皮膜中に融体が取り込まれる現象が観察された.また,Nb(Si,Al)_2のDIP法では,反応生成皮膜に割れが生じづらく,きれいな皮膜が生成することがわかった.この傾向はAl-Si融体中にあらかじめ入れるNb粉末の量を増加させると顕著に現れることがわかった.
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