Research Abstract |
本研究では,表面における非線型効果を観測するためのプローブ用の波長可変の赤外光源を整備することが第一の重要な鍵となるため,本年度は,まず,その一次光源となる高出力ピコ秒パルスNd:YAGレーザーを導入し,赤外光発生系および過渡光応答測定系の設計・整備を進めた. また,これと並行して,超高真空中での化合物半導体表面における非線型光学効果の観測を行うため,現有の超高真空排気装置中で低速電子線回折(LEED)およびオージェ電子分光(AES)を用いて,GaAs(001)表面の清浄化手法の検討を行った.通常のGaAsのMBE成長では,Asビーム照射下での熱処理により基板表面の清浄化が行われているが,電子分光系への汚染の問題から,本研究では,(1)真空中での600℃近傍での熱処理,(2)活性水素照射,(3)硫化アンモニウム処理によるパッシベーション,の3通りの手法を比較検討した.その結果,従来,高速電子線回折(RHEED)観測では,これらの手法によってストリーク状の回折像が得られているにも関わらず,LEED観測では,(1)の場合,ファセットが形成されること,(2)では,比較的低温で酸化膜が除去されるが,Ga安定化4×2再構成表面のダイマーに水素が吸着したと考えられている4×1再構成像が観測され,容易に熱処理によって水素が脱離しないこと,(3)では,600℃程度の熱処理無しでは,回折像が観測されないことが明らかとなった.これらは,LEED像が得られる表面の条件が,RHEEDと比較して狭いことに起因すると考えられるが,本研究では,LEED像が観測できる規定された表面状態を基準とする必要があり,清浄化手法の検討が優先課題であることが明らかとなった.
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