Research Abstract |
前年度,超高真空中でのGaAs(100)基板表面の清浄化法の確立が大きな課題であることが明らかとなったため,まず,表面清浄化の手法の検討を進めた.新たに,Arイオンビーム照射に基づく清浄化手法の処理条件の検討を行った結果,加速電圧1kV,基板温度480℃における60分間のイオンビーム照射と,580℃30分間の熱処理を行うことによって,低速電子線回折およびオージェ電子分光によって清浄と認められる表面状態を実現できることを見いだした.また,熱処理直後は,LEEDにより4×2の表面再構成パターンが観測されるが,500℃以下まで降温すると,4×6に変化する.さらに,Wフィラメントにより,原子状化した水素を照射すると,LEEDパターンは,4×1に変化した.この変化に伴う表面電子状態の変化を明らかにするため,異方性反射率スペクトルを測定したところ,酸化膜で覆われた表面では,2.9eVにピークを有する正の信号が支配的であるが,酸化膜を除去すると,2.5eVに負のピークが現れる.さらに,原子状水素の照射を行うと,2.5eVのピークが消失し,再び2.9eVのピークが現れることを見いだした.従来の報告との対応から,2.9eVのピークは,Asダイマーまたはバルクに,また,2.5eVの負のピークは,Gaダイマーに起因するものと予測されるが,ピークエネルギーなどの点で不一致があり,詳細な検討が必要と考えられる.表面非線型効果に関しては,YAG:Ndの基本光である1.064nmの入射光に対する4×2表面からのSHG光の観測に成功した.45°入射の場合の偏光方位依存性を測定した結果,2回対称性があることを確認した. 一方,赤外光源の作製には遅れがあるが,偏光方向依存性を測定するための基板回転機構の付加を含めて,現在,遅れを取り戻すべく,早急に整備を進めている.
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