1996 Fiscal Year Annual Research Report
疑似移動層を組み込んだオリゴペプチド合成用バイオリアクターシステムの開発
Project/Area Number |
07555563
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中西 一弘 岡山大学, 工学部, 教授 (90026584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩田 堅 三菱化学(株), 中間体事業部, 部長(研究職)
宇多川 隆 味の素(株), プロセス開発研究所, 副部長(研究職)
白井 義人 九州工業大学, 情報工学部, 助教授 (50175395)
崎山 高明 岡山大学, 工学部, 講師 (70170628)
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Keywords | サーモライシン / アスパルテ-ム / 固定化酵素 / 有機溶媒 / 酵素合成 / 熱安定性 / 自己消化 |
Research Abstract |
本研究では、固定化サーモライシンを用いたジペプチド前駆体合成反応において、生成物を連続的に分離回収するための疑似移動層を組み込んだバイオリアクターシステムの開発を最終目的としている。本年度は、主として、バイオリアクターを構築する上で、活性と並んで重要な固定化酵素の安定性に及ぼす因子の詳細な解析を行った。モデル反応系として、(1)式で表されるアスパルテ-ム前駆体合成反応を取り上げた。 Z-Asp + PheOMe → Z-AspPheOMe + H_2O (1) 固定化酵素の有機溶媒中、緩衝液中での安定性に及ぼす多孔性担体の孔径、及び温度に着目して検討した。種々検討した多孔性担体の中では、平均細孔径10nmのAmberlite XAD7に酵素サーモライシンをグルタルアルデヒド架橋法により固定化した酵素が最も高い安定性を示した。また、有機溶媒としては酢酸エチルよりもt-アミルアルコール中で、著しく安定性が高かった。t-アミルアルコール中では、80°Cで10時間インキュベート後も80%の残存活性を示した。水分濃度の影響に関しては、酢酸エチル中では3〜4%を、また、t-アミルアルコール中では8〜10%を超すと急激に安定性が低下した。残存活性の経時変化は、一次反応ではなく二次反応に近い挙動を示した。固定化酵素よりの酵素の漏れを調べたところ、酢酸エチル中でインキュベートした場合には、酵素の自己消化物とみられるバンドがSDS-PAGE上で観察された。また、酵素の漏れは水分として添加する緩衝液中のカルシウム濃度が高くなると減少した。これらのことから、固定化酵素が酢酸エチル中で不安定な原因は、固定化されている酵素の周囲に水相が生じ、その中で自己消化反応が起こるためであり、t-アミルアルコール中で安定な理由は、酵素の周囲には明確な水相が存在しないためであることが示唆された。
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