1996 Fiscal Year Annual Research Report
日本産マルハナバチ類の周年飼育法の確立とその花粉媒介への利用に関する研究
Project/Area Number |
07556018
|
Section | 試験 |
Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
小野 正人 玉川大学, 農学部, 講師 (70204253)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 真一 神奈川県農業総合研究所, 生物資源部, 技師
中村 純 玉川大学, 学術研究所, 講師 (30256002)
吉田 忠晴 玉川大学, 学術研究所, 助教授 (80138601)
佐々木 正己 玉川大学, 農学部, 教授 (40096061)
松香 光夫 玉川大学, 農学部, 教授 (30074339)
|
Keywords | マルハナバチ / オオマルハナバチ / クロマルハナバチ / ポリネーター / 昆虫機能利用 / 飼育法 / 花粉媒介 / 生物多様性の保全 |
Research Abstract |
日本産マルハナバチ類の中で作物の受粉用に実用化できる候補種として、オオマルハナバチ(Bombus hypocrita)とクロマルハナバチ(B.ignitus)の2種が絞り込まれた。この2種は、欧州で商品化された導入種セイヨウオオマルハナバチと分類学的に近縁である。初年度の研究補助金で導入したマルハナバチ専用増殖装置内で、春に野外で採集した越冬後のオオマルハナバチ(採集地:長野県、山梨県、岐阜県、北海道)とクロマルハナバチ(採集地:長野県)を人工飼育した。その結果、オオマルハナバチ(北海道産の亜種エゾオオマルハナバチも含む)、クロマルハナバチともに女王蜂の造巣率は80%以上であり、75%以上の巣で最初の働き蜂が羽化する段階まで営巣が進行した。さらに、働き蜂が羽化する段階にまで至ったコロニーでは、その内の約80%が生殖個体(新女王蜂と雄蜂)を生産する採集段階に到達した。この値は、対照区としたセイヨウオオマルハナバチと比較すると幾分劣っており、生産コストという面では高くつくことが懸念されるが、生態系への安全性を考えれば十分検討する価値はあろう。これらの実験室内で育てられた日本産マルハナバチの温室トマト(桃太郎T93)に対する受粉効率については、両種ともに振動集粉行動を示し着果率も80%以上という高い値が得られた。その値とセイヨウオオマルハナバチのそれとの間に差は見出だされなかった。同時に、セイヨウオオマルハナバチが日本産マルハナバチに及ぼす負のインパクトとして、巣の乗っ取りと種間交雑(遺伝子汚染)が起こり得ることが実証された。さらに、この研究遂行の最中、北海道沙流郡で温室から逸出したセイヨウオオマルハナバチの自然巣が発見され、その導入種の帰化が既に局地的に始まっていることも明らかとなり日本在来種の実用化は急務であると考えられた。
|
Research Products
(12 results)
-
[Publications] ONO,M.: "Pollinotion margement using native bumblebees in Japan" Summaries of the 7th Internotional Pollination Symposium. 40- (1996)
-
[Publications] Asada,S.: "Tomato polination with Japanese native bumblebees (Bombus spp.)" Summaries of the 7th Internotional Pollination Symposium. 41- (1996)
-
[Publications] Mitsuhata,M.: "Hybridization between Japanese and European bumblebees (Bombus spp.)" Summaries of the 7th Internotional Pollination Symposium. 57- (1996)
-
[Publications] 小野正人: "第23回環境賞優良賞 日本在来種マルハナバチの実用化に関する研究" 季刊環境研究. 103. 21-25 (1996)
-
[Publications] Asada,S.: "Crop Pollination by Japanese bumblebees,Bombus spp.(Hymenoptera : Apidae) : Tomato foraging behavior and pollination efficiency" Appl.Entomol.Zool.31(4). 581-586 (1996)
-
[Publications] 浅田真一: "日本産マルハナバチの実用化に向けて" ミツバチ科学. 18(1). 21-28 (1997)
-
[Publications] ONO,M.: "Ecological Implications of introduced Bombus terrestris,and Significance of domestication of Japanese native bumblebees (Bombus spp.)" Proceedings of International Workshop on Biological Invasions of Ecosystem by pests and Beneficial Organisms. 244-252 (1997)
-
[Publications] 小野正人: "マルハナバチと生物多様性" 遺伝. 51(3). 6-7 (1997)
-
[Publications] 小野正人: "セイヨウオオマルハナバチ-巣の乗っ取り,遺伝子汚染恐れていた野生化が始まった" SClaS(サイアス,朝日新聞社). 2(5). 76-77 (1997)
-
[Publications] 小野正人: "ポリネーターとしてのマルハナバチ-その実態と利用上の将来的展望" 平成8年度農薬バイオテクノロジー関連技術情報調査報告書. 26-44 (1997)
-
[Publications] 小野正人: "ポリネーター昆虫の管理と利用-特に日本産マルハナバチの室内飼育と花粉媒介能-" 農作業研究. 32(1). 133-134 (1997)
-
[Publications] 小野正人: "マルハナバチの世界-その生物学的基礎と応用-" (社)日本植物防疫協会, 132 (1996)