1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07556136
|
Section | 試験 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 正彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60162020)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 広明 東京農工大学, 農学部, 助手 (80222660)
嶋田 透 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20202111)
伴戸 久徳 北海道大学, 農学部, 助教授 (20189731)
中垣 雅雄 信州大学, 繊維学部, 助教授 (70135169)
宮嶌 成壽 三重大学, 工学部, 教授 (80239409)
|
Keywords | 昆虫ウイルス / 分子疫学 / カイコ / PCR / 核多角体病ウイルス / 濃核病ウイルス / 細胞質多角体病ウイルス / レトロトランスポゾン |
Research Abstract |
本年度は,昆虫ウイルスの動態と生態を分子生物学的な手法を用いて解明し,益虫の保護,有害害虫の防除,人畜の感染症の予防,植物の保護などに,直接応用できる診断システムを開発することを目的に,実験を行った。また、カイコのゲノム中に存在するウイルス様DNA塩基配列について,基礎的データをさらに集めた。結果の概要は以下の通りである。 1.蚕糞中の核多角体病ウイルス(NPV)と濃核病ウイルス2型(DNV-2)を,PCR法を用いて同時に検出する方法を開発した。この方法により,養蚕現場での効果的なウイルス病防除が行える可能性が高まった。現在,さらに簡易的なDNA抽出方法について検討し,養蚕現場への応用を試みている。 2.カイコのDNV-2感受性遺伝子(+nsd-2)に連関するランダム増幅多型DNA(RAPD)を2個発見した。さらに組換え実験により,それぞれのRAPDの+nsd-2遺伝子からの遺伝的距離を求めた。 3.カイコの細胞質多角体病ウイルス(CPV)を高感度で検出するための,バイオセンサーの開発を,昨年に引き続き試みた。実用化までには,いくつかの問題を解決しなければならないことが判明した。 4.カイコのゲノム中に存在するウイルス様DNA塩基配列を,新たに数個,発見した。これらの配列は,データベース上の検索から,各種レトロウイルスのゲノム,あるいはレトロトランスポゾンとの相同性が認められた。これらの配列データをもとに,ウイルス様配列の転移機構について推察した。ほとんどのウイルス様配列は,過去に転移したものが,そのままゲノムの中にとどまっており,現在では転移機能を失っていると不活性型と考えられた。しかし一部のレトロトランスポゾン様配列は,胚発生の特定の時期にmRNAに転写されており,活性型である可能性が示唆された。
|
Research Products
(8 results)
-
[Publications] 阿部広明: "カイコ濃核病ウイルス1型感受性系統保存へのDNA診断法の応用" 日本蚕糸学雑誌. 65・3. 196-200 (1996)
-
[Publications] 大林富美: "限性形蚕,限性セ-ブルならびに限性黒色蚕のW染色体に存在する同一のRAPD" 日本蚕糸学雑誌. 65・5. 395-398 (1996)
-
[Publications] Hiroaki ABE: "Nucleotide Sequence of the Raindom Amplified Polymorphic DNA(RAPD)on the W Chromosome of the Silkworm,Bombyx mori(Lepidoptera:Bombycidae)" Applied Entomology and Zoology. 31・4. 633-637 (1996)
-
[Publications] Hajime TAKEDA: "Impaired yolk protein uptake by oocytes of a Bombyx mori mutant." Insect Biochemistry and Molecular Biology. 26. 607-616 (1996)
-
[Publications] Kozo TSUCHIDA: "Purification and properties of a lipid transfer particle from Bombyx mori." Biochem.Biophys.Acta. (in press). (1997)
-
[Publications] Takashi TOMITA: "Chromosomal localization of amplified esterase genes in insecticide resistant culex mosquitoes." Insect Biochemistry and Molecular Biology. (in press). (1997)
-
[Publications] 前川 秀彰: "昆虫ゲノム解析の研究の現状(蚕糸・昆虫研資料)" 農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所, 153 (1996)
-
[Publications] 宮嶌 成壽: "ウイルス学" (株)朝倉書店(出版予定), (1997)