1995 Fiscal Year Annual Research Report
水の構造化を利用した農産物の鮮度保持システムの開発
Project/Area Number |
07556141
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Research Category |
Grant-in-Aid for Developmental Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大下 誠一 東京大学, 農学部, 助教授 (00115693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川越 義則 東京大学, 農学部, 助手 (80234053)
相良 泰行 東京大学, 農学部, 講師 (30012024)
瀬尾 康久 東京大学, 農学部, 教授 (80011914)
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Keywords | 農産物 / 鮮度保持 / 水の構造化 / 代謝抑制 |
Research Abstract |
本研究で提示した代謝の抑制の物理的基礎をなす水の構造化を実験的に裏付けるために、プロトンNMR測定を行った。耐圧NMR試料管に蒸留水を入れ、上部空間にキセノンガスを0.7MPaの圧力まで圧入してキセノンガスを蒸留水に溶解させた。298K、283Kおよび279Kで測定した吸収スペクトルの化学シフトは蒸留水で求めた化学シフトよりも大きくなり、キセノンガスを溶解させた蒸留水では水素結合した水分子集団が増加したことが示された。 一方、これと平行して行った実用化実験では鮮度保持の対象に劣化が早いブロッコリを取り上げ、呼吸代謝の抑制効果を検討した。ブロッコリ試料は栽培農家で直接収穫した。農産物は収穫直後に異常な呼吸量の増大を示すことが多いので、収穫後275Kの温度で1日保存した後に実験に供した。ブロッコリを容積約2lのステンレス製保存容器に入れ、分圧0.28MPaまでキセノンガスを圧入したものをキセノン区、大気組成の下で同容積の保存容器にブロッコリをいれて密封したものを対照区とした。これらを288Kの下で9日間保存し、キセノン区と対照区の二酸化炭素濃度を測定した。その結果、対照区では二酸化炭素分圧が0.75KPaから90KPaまで増大したのに対し、キセノン区では0.55MPaから56KPaの増加に留まった。これより累積炭酸ガス放出量を計算すると、9日間で対照区は14125mgCO_2/kg、キセノン区では10618mgCO_2/kgとなり、キセノン区の呼吸量は対照区の75%に抑制された。また、質量損失は対照区で4.4%、キセノン区では3.1%であった。これにより、提案した方法の妥当性が示された。ただし、保存温度が288Kと高温度であったため、呼吸の抑制は認められたが、鮮度保持に効果的な呼吸量までには抑えられなかった。今後は保存温度と水の構造化を組み合わせた条件を設定して、実験を行う予定である。
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