1997 Fiscal Year Annual Research Report
走査型プローブ顕微鏡による細胞の分子解剖技法の開発
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07557003
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Research Institution | Kitasato University School of Medicine |
Principal Investigator |
山科 正平 北里大学, 医学部, 教授 (90013987)
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Keywords | 走査型プローブ顕微鏡 / 細胞構造 / 生体膜 / 組織化学 / 分子解剖 |
Research Abstract |
A.細胞及び小器官の形状観察のための最適条件の決定 (1)凍結超薄切片の観察技法の開発:細胞の超微細構造を最大限の解像力でAFMによる画像化のための最適条件を検討した。その結果、固定した試料の約800nm厚の凍結超薄切片を臨界点乾燥処理を施して、オリンパス製のACモード用ミクロカンチレバ-を使用してサイクリックコンタクトモードによる観察が至適なものであることが判明した。これにより約30nmの解像力で膜の超構造が観察できるが、本装置の潜在能よりはまだ遠く、今後カンチレバ-の先鋭化が焦眉の問題としてクローズアップされるに至った。 (2)生体膜の真表面の観察:細胞膜の表面構造を観察するため、フリーズフラクチャー試料にSDS処理を施してサイクリックコンタクトモードで観察を行った。それにより膜の親水面に露出するリン脂質とタンパクが約30nmの凹凸となって観察されるようになってきた。 B.組織化学法へ応用するための基礎的研究 (1)組織化学標識物の観察:組織化学の標識物であるコロイド金粒子をモデルに、実際に生物試料に標識した場合、金粒子がどこまで固定可能かの検討を行った。その結果、標識された直径20nmの金粒子が、現状のベストの条件で高さが約18nm、x^-y方向の直径が約50nmとなって検出された。金粒子に2次抗体あるいはレクチン分子が付着していることを考慮しても、この結果はなお期待値よりもかなり大きく、探針の側方効果が作用していることが推定される。生物試料のもつ不均一性を前に、SPMを生物試料に適応する上でこの探針の側方効果をできるだけ軽減させる方途が今後解決されるべき問題である。 (2)KFMによる酵素組織組織化学反応の検出:KFM法による試料表面の電位差の検出機能を、組織化学反応の反応産物の検出に応用する可能性について検討した。そのためアルカリ性、酸性フォースファターゼ検出用の鉛法による組織化学反応を施した腎臓、肝臓の凍結超薄切片をKFMに適応して、観察条件の設定を行った。至適条件下で反応産物のリン酸鉛が透過電顕で観察された部位に一致して局在することが認められた。しかし、現状では細胞のトポ像の画質がAFMに比して格段劣ることに加え、検出感度が低いため視野を数μm角にまで小さくする必要があり、このあたりに格段の改善が求められている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 山科正平: "SPMの医学・生物学領域への応用の現状と将来" 電子顕微鏡. 32Suppliment 2. 15-19 (1997)
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[Publications] 牛木辰男、伊藤悦朗、山科正平: "医学生物学の原子間力顕微鏡" 西村書店(刊行予定), (1998)