Research Abstract |
本研究の目的は,個人の疲労状態,とりわけ疲労状態を簡易に評価するための「疲労調査票」を開発することである.研究計画の最終年度である平成8年度の研究経過は,以下の3点に集約される.すなわち, 1)疲労調査票の判定基準の設定(神山,斉藤健) 前年度に行った検討を踏まえ,「疲労調査法」における疲労の判定基準を設定し,試作を行った.その構成は,設問1は慢性疲労状態を表わす10項目の質問に対して「はい」,「いいえ」で答える,設問2は全く疲れていないときを「0」,非常に疲れているときを「10」とする無段階疲労度スケールに,現在の自覚的疲労程度を示す形式を採用した. 2)労働現場における疲労調査の実施とその解析(高倉,神山) 「疲労調査票」を用いた調査を実施し,工場労働者,団体役員,地方公務員等約1400名より回答を得た.訴え項目数の合計が「0」でかつ疲労度スケールが「0」のものを(1)疲労なし群,訴え数の合計が「7」以上かつ疲労度スケールが「7」以上のものを(3)疲労群,その他を(2)疲労群とした.その結果,有病者の疲労なし群は6.7%,疲労群が92%,過労群1.3%,健常者の疲労なし群は6.9%,疲労群は91.5%,過労群は1.6%であった.また,残業時間の多い群に過労群が有意に多く,自覚症状も増加し,その傾向は健常者で明確に認められ,訴え項目数と疲労度スケール双方の成績には有意な相関が認められた.以上から,2つの異なったスケールを組み合わせた「疲労調査票」は慢性疲労の測定に有効であることが示唆された. 3)全体のまとめおよび報告書の作成(斉藤和雄) 上記の成績は,本研究の当初の目的はほぼ達成されたことを示す.そこで,得られた知見を抽出し,今後の課題等についても検討を加え研究内容をまとめた.
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