1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト同種組織移植臨床応用のための凍結保存法による組織銀行システムの確立
Project/Area Number |
07557089
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Research Category |
Grant-in-Aid for Developmental Scientific Research (B)
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
北村 惣一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10028607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東条 尚 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (20254500)
庭屋 和夫 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (30254501)
河内 寛治 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (90116020)
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Keywords | 凍結保存 / 同種弁移植 / 同種気管移植 / 免疫拒絶反応 |
Research Abstract |
【凍結保存同種組織移植の研究】凍結保存同種弁と凍結保存気管移植の実験により,種々の凍結保存組織の宿主生体内での反応につき検討した.[同種弁の移植実験]PVG(RT1c)をドナー,ACI(RT1a)ラットをレシピエントとする移植モデルで、ドナーの大動脈弁を凍結保存し、1週間後に解凍し,レシピエントの腹部大動脈に異所性に移植した(A群).凍結保存を行わない移植群を対照群(B群)とし,摘出した大動脈弁葉を,免疫組織染色(抗RT1a抗体,抗RT1c抗体)により移植大動脈弁組織におけるドナー由来(RT1c陽性)細胞とレシピエント由来(RT1a陽性)細胞の存在分布を調べた.結果、A群では内皮細胞層は有意には染色されず,結合組織にもRT1a陽性の細胞の存在は明確ではなかった.B群でRT1a陽性の細胞浸潤が顕著であった.現在、移植後長期間での変化を追うべく観察している.[同種気管の移植実験]雑種成犬による凍結保存同種気管移植(A群)、自家気管移植(B群)、新鮮同種気管移植(C群)を行った.免疫抑制剤は全く使用しなかった.C群では全頭気管狭窄で死亡し、気管組織は粘膜上皮の脱落、軟骨壊死、慢性の炎症像が見られた.A,B群とも全頭6カ月以上生存した.犠死した気管組織はほぼ正常組織像を呈した.凍結保存同種気管移植では移植気管は長期経過後も拒絶されなかった.[考察]本研究では同種気管移植において凍結保存により移植気管の抗原性が低下したことが判明し,またラット同種弁の移植実験では移植後急性期では凍結保存同種弁は強い拒絶反応にはさらされないことが示唆された.組織による差異はあるが,凍結保存による移植組織の抗原性の変化(低下)が,各組織移植に有利に働いていると考えられる.[結論]凍結保存ラット同種弁の移植実験および凍結保存犬同種気管の移植実験を行い,移植組織は凍結保存後抗原性が低下し,宿主内での強い拒絶反応からは回避されることが示唆された. 【同種組織銀行システムの研究】同種組織銀行の設立にむけて、我々が経験した組織(同種弁・皮膚)提供の現状と問題点を検討し報告した。現時点では、腎臓等の臓器移植ドナーからの組織の同時提供は、清潔環境下で、かつ短時間の温阻血時間での組織採取が可能で良質の組織提供に結びつくことを示し、今後、臓器移植ネットワーク等との連携の重要性および組織のみの提供者の場合の迅速な連絡体制と組織摘出の環境整備の重要性を明らかにした。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kitamura S.,Kawachi K.,et al.: "Size-reduced cryopreserved pulmonary valve allograft for an RV-PA conduit:Technical modification and functional evaluation." J Card Surg. 10. 14-20 (1995)
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[Publications] Niwaya K.,Kitamura S.,et al.: "Effect of warm ischemia and cryopreservation on cell viability of human allograft valves." Ann Thorac Surg. 60. s114-117 (1995)
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[Publications] 長谷川順一,北村惣一郎,他: "同種大動脈弁による大動脈弁置換術後の運動負荷時弁機能の検討-St.Jude Medical弁及びBicer弁との比較-。" 日胸外会誌. 43. 1132-1137 (1995)
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[Publications] 北村惣一郎,庭屋和夫: "同種弁(ホモグラフト、アログラフト)移植手術。" 胸部外科. 49. 65-72 (1996)
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[Publications] Niwaya K.,Kitamura S.,et al.: "Initial trial to organize a cryopreserved allograft valve bank in Japan." Transplant Proceed. (掲載予定). (1996)
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[Publications] Tojo T,Niwaya K.,et al.: "Tracheal allogenic immunoresponse is reduced by cryopreservation.:Canine experiment." Transplant Proceed. (掲載予定). (1996)