1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト同種組織移植臨床応用のための凍結保存法による組織銀行システムの確立
Project/Area Number |
07557089
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
北村 惣一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10028607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 秀仁 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (40295803)
東条 尚 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (20254500)
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Keywords | 凍結保存 / 同種弁移殖 / 同種気管移植 / 免疫拒絶反応 / 創傷治癒 / 組織バンク |
Research Abstract |
1.凍結保存同種組織移植の研究:凍結保存による組織バンク確立するための裏付けとして我々の組織凍結保存技術による保存組織の移植後宿主内での反応につき動物実験による研究を行なった。 (1)凍結保存同種組織移植における移植組織を構成する細胞の抗原性の変化:PVC(RTlc)ラットをドナー、ACI(RTla)ラットをレシピエントとする移植モデルで、凍結保存同種血管移植および凍結保存同穫気管移植を行なった。経時的な免疫組織染色を検討した結果、凍結保存組織移植後の上皮、内皮細胞の再生の時期や形式には組織による差異が認められた。また、凍結保存による移殖組織の抗原性の低下が示唆された。 (2)凍結保存同種血管組職の移植後創傷治癒能力保持の検討:Viabilityが保存された凍結保存組織の宿主内での反応について遺伝子レベルでの検討を目的に、創傷治療促進因子であるfibroblast growth factor(FGF)mRNAの発現を検討した。Wisterラット胸部大動脈の同系ラット背部皮下移植モデルを用いた。同種血管組織を摘出、凍結保存後、移殖後、経時的なFGF-mRNAの発現をRT-PCR法により観察した。結果、すべての時点でRt-PCRにより当該組織のFGF-mRNAの発現が示された。凍結保存血管組織はFGFなどのサイトカインの産生能を有し、移植後局所創傷治癒を促進することが示唆された。臨床的に凍結保存同種弁が、局所組織が脆弱な感染性心内膜炎に対して第一選択肢とされてきた理論的な裏付けを目指した研究の展開が可能となった。 2.同種組織バンクシステムの研究:試験的に凍結保存同種弁バンクを設立し、コーディネーション、組織摘出、保存および保存弁の情報管理を行った。救急施設から腎臓、角膜、皮膚等の臓器・組織の堤供と同時に28例のドナーから同種弁の提供を受けた。同時期に関連施設の病理解剖症例から承誌を得て同種弁の提供を受けた12例と、2群間で組織提供条件を比較した。結果、試行した組織バンクにより若年のドナーから短い温阻血時間で同種弁の提供を受けることができ、より良質な医療の提供につながることが示された。同種組織の保存と供給をつかさどる組織バンクの整備と組織移植に対する移植コーディネーターの関与のすみやかな実現が必要と考えられた。同時に、提供された組織の全国レベルでの有効利用、すなわち共同使用(sharing)のために統一した保存組織データーベースの作成を目指した。同種弁凍結保存研究を発表してきた全国の大学、研究組織との情報交換をを行ない、汎用ソフトウェアを用いた統一データーベースを作成した。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] Hasegawa J,Kitamura S,et al.: "Comparative rst and exercise hemodynamics of allograft and prost Valves in the aortic position" Ann Thorac Surg. 64. 1753-1756 (1997)
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[Publications] 庭屋和夫、坂口秀仁、ほか: "特集 弁膜症手術の最前線[Homograft]" 循環器Today. 1. 804-810 (1997)
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[Publications] 北村惣一郎、庭屋和夫、ほか: "国内で採取したホモグラフト使用大動脈弁置換手術の中期成績。" 日胸外会誌. 44. 1364-1364 (1996)
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[Publications] 庭屋和夫、北村惣一郎、ほか: "人工弁感染性心内膜炎(PVE)に対してホモグラフト大動脈弁による大動脈基部置換を行なった1症例" 胸部外科. 49. 65-72 (1996)
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[Publications] 庭屋和夫、北村惣一郎、ほか: "凍結保存同種弁組織バンク構想の現況と問題点" 今日の移殖. 9. 307-310 (1996)
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[Publications] 庭屋和夫、: "平成7年度奈良県医師会学術奨励賞研究「ヒト同種生体弁の凍結保存法の研究」" 奈良県医師会報. 9. 42-43 (1996)
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[Publications] Niwaya K,Kitamura S,et al: "Initial trial to organize a cryopreserved allograft valve bank in Japan." Transplantation Proceedings. 28:. 1124-1125 (1996)
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[Publications] Tojo T,Niwaya K,et al: "Tracheal allogenic immunoresponse is reduced by cryopreservation:Canine experiment." Transplantation Proceedings. 28:. 1814-1815 (1996)
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[Publications] Hasagawa J,Kitamura S,et al: "Echocardiographic characteristics of the cryopreserved allograft aortic valve replacement assessed by intraoperative transesophageal echocardiography" Cardiovascular Surgery. 4:. 293-298 (1996)
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[Publications] 北村惣一郎,庭屋和夫: "同種弁(ホモグラフト・アログラフト)移植手術." 胸部外科. 49:. 65-72 (1996)
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[Publications] 長谷川順一、北村惣一郎、ほか: "同種大動脈弁による大動脈弁置換術後の運動負荷時弁機能の検討-St.Jude Medical弁及びBicer弁との比較-" 日胸外会誌. 43:. 1132-1137 (1995)
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[Publications] Niwaya K,Kitamura S,et al: "Effect of warm ischemia and cryopreservation on cell viability of human allograft valves." Ann Thorac Surg. 60:. s114-117 (1995)
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[Publications] 庭屋和夫、Elkins RC,北村惣一郎: "Annual Review 循環器 1998「凍結保存同種大動脈弁移殖後の遠隔成績」" 中外医学社発行、杉本恒明、松本昭彦、杉下靖郎、門間和夫 編集, 6 (1998)
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[Publications] 坂口秀仁、庭屋和夫、ほか: "日本胸部外科学会関西地方会第25回学術セミナーテキスト「ヒト同種弁を用いた大動脈弁置換術までの弁の処理過程-採取・滅菌・凍結・解凍-」" 日本胸部外科学会関西地方会発行 加藤逸夫編, 7 (1998)
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[Publications] 北村惣一郎、庭屋和夫、谷口繁樹: "新外科学大系(追補 3)胸部・血管の外科「Homograft弁を用いた大動脈弁置換術」" 東京:中山書店発行幕内雅敏 監修, 16 (1997)
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[Publications] 北村惣一郎、庭屋和夫: "心臓弁膜症の外科「Homograftによる大動脈弁置換」" 医学書院、新井達太編, 18 (1997)