1996 Fiscal Year Annual Research Report
VHL遺伝子とHSVベクターを用いたヒト腎癌の実験的な遺伝子治療の検討
Project/Area Number |
07557105
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
執印 太郎 高知医科大学, 医学部, 教授 (80179019)
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Keywords | von Hippel-Lindau病 / 遺伝性腫瘍 |
Research Abstract |
散発性ヒト腎癌は手術以外では治療困難な癌の1つである。我々は過去の研究でVHL癌抑制遺伝子がヒト腎癌の主要な癌抑制遺伝子であることを明らかにした。今回、VHL癌抑制遺伝子を遺伝子治療に利用するため、またin vivoでVHL癌抑制遺伝子の機能を知る目的で、我々はヒト腎癌細胞を対象としてHSV vector系を用いて、実験的な遺伝子治療の前段階的な検討を試みた。その結果、HSV vectorの系は、従来いわれていたような神経系の細胞のみならず、腎癌細胞でも感染し、目的のVHL蛋白を発現した。Western blotや細胞の免疫染色などの検討ですべての腎細胞で定量的にも、安定性にもVHL蛋白はほぼすべての細胞で発現を示し、この点では我々の目的は実現された。この研究と並行した検討である人体のどのような細胞系で遺伝子発現が観察されるか検討した結果では小脳と腎の近位尿細管で強い発現がみられた。 今回の結果では残念ながら、VHL蛋白は発現したものの、神経系の細胞とは異なり、HSV vector系は培養腎細胞に対して細胞障害性を示した。即ち、24時間以後で細胞が培養器の表面から剥離していき、この現象はVHL遺伝子を組み込んだHSV vectorのみならず、コントロールとして用いたLacZを組み込んだHSV vectorでも認められた。この点の克服が今後の我々の研究の問題点である。 VHL遺伝子の細胞内での作用はまだ不明の点が多いが、現在のところ、細胞内での発現の結果で、間接的に Vascular endothelial growth factor(VEGF),PDGF beta chain などの発現の抑制が見られるとされる。しかし、細胞内での発現で強いDNA合成の抑制効果もみられるため、癌抑制遺伝子としての作用の本体はまだ明かではない。今後のもう1つの目的はこの系を使用してVHL蛋白を細胞内へ多量に発現させて細胞内での作用解明することである。そのためvector系の変更についても検討中である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Yooji Nagashima,Taro Shuin: "Von Hippel-Lindau tumor suppressor gene. Localization of expression by in situ hybridization." Journal of pathology. 180. 271-274 (1996)
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[Publications] Hiroshi Kanno,Taro Shuin: "Molecular Genetic Diagnosis of von Hippel Lindau disease : Analysis of Five Japanese families." Jpn.J.Cancer Res.87. 423-428 (1996)
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[Publications] 執印太郎: "遺伝子病マニュアル「von hippel-Lindau病」" 中山書店, 399 (1996)
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[Publications] 執印太郎: "Annual Review 腎臓 von Hippel-Lindau病遺伝子" 中外医学社, 247 (1996)