1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07557193
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Section | 試験 |
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
遠藤 政夫 山形大学, 医学部, 教授 (40004668)
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Keywords | Caセンシタイザー / エンドセリン / 交感神経α_1受容体 / Ca^<2+>トランジェント / エクオリン / プロテインキナーゼC / 陽性変力作用 / ホスホイノシタイド代謝促進 |
Research Abstract |
慢性うっ血性心不全の治療は循環器系疾患の中でもっとも重要な位置を占めている。これはうっ血性心不全の死亡率の高さと、確立された治療法がないことによる。心不全治療薬は大きく二つに分類される。すなわち、心筋に対する負荷の減少と心筋細胞収縮性の増強である。最近の20年間、後者に対する期待が非常に大きかったが、短期的には、血行動態と運動能力の改善により、患者の生活の質(QOL)を顕著に改善するが、長期的投与により生命予後に対して好ましくない作用を発揮することが明らかになり、現在はもっぱら前者による治療が主体となっている。しかし、心不全の病態の本体は心筋細胞収縮不全であることを考慮すると、より勝れた強心薬の開発もまた重要な意義を持つ。ことに、現存する強心薬の欠点の大きいことは、心不全の治療における重要な問題点として認識されている。強心薬のもっとも不都合な点はその機序の延長線上で起こる。すなわち、Ca過剰負荷による心不整脈の発生およびエネルギー効率の低下による心筋細胞障害である。さらに心筋虚血再灌流後に生ずるstunned myocardium(気絶心筋)のような状態では、細胞Ca上昇は、もはや心筋収縮力を改善することが不能である。このような状況下においては、収縮タンパクCa感受性増強機序による収縮性の改善が大きな意義を持つことになる。この機序で作用する強心薬はCaセンシタイザーと呼ばれるが、現在、幾つかのCaセンシタイザーが開発の途上にあり、臨床的に有用な治療薬が開発される可能性が高い。本研究では、Org-30029がアシドーシスあるいはBDM(E-Cuncoupler)の存在下で起こる収縮抑制を効果的に改善することをエクオリン負荷イヌ心室筋標本で明確に示した。もう一つの興味あるCa感受性増強は、ホスホイノシタイド(PI)加水分解とともに起こる機構である。アンジオテンシン、エンドセリン、alpha-1受容体刺激は、Caトランジェント増強とともにCa感受性増強の機序で陽性変力作用を惹起する。これらの受容体刺激によるシグナル伝達過程の解明は、新しい強心薬開発の端緒となる可能性がある。本研究においてPI代謝促進が細胞レベルにおける調節機序として重要な役割を演じている可能性を支持する研究結果が得られた。
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[Publications] 藤田伸二: "Effects of endohelint on [Ca^<2+>] shortening trejectory and Ca^<2+> sensitinity in rabbit single ventrioalar cordis myocytes loaded with indo-1/AM : comporison with the effects of phenylephrine and angioteasin II." J.Cardise Failure. 2. S45-S57 (1996)
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[Publications] 渡辺章: "Ca^<2+> sensitiger Org-30029 reverses acidosis-and BDM-induced contractile deprassion in canine myocardium." Am.J.Physiol.271. H1829-H1839 (1996)
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[Publications] 遠藤政夫: "各種強心薬の分類とその特徴" THERAPEUTIC RESEARCH. 17・3. 165-172 (1996)
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[Publications] 遠藤政夫: "心不全治療薬の細胞レベルにおける作用機序" 臨床薬理. 27・1. 437-440 (1996)
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[Publications] 藤田伸二: "単離心筋細胞内遊離Ca^<2+>および収縮運動測定" 実験医学. 14・12. 160-165 (1996)
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[Publications] 遠藤政夫: "心筋細胞内情報伝達系とカルシウム" CLINICAL CALCIUM. 6・9. 30-34 (1996)
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[Publications] 遠藤政夫: "New Horizons for Failing Heart Syndrome" Springer,Tokyo, 22 (1996)
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[Publications] 遠藤政夫: "Molecular and Callular Mechanisms of Cardiovascular Regulation" Springer,Tokyo, 25 (1996)