1996 Fiscal Year Annual Research Report
内在性D-セリンの脳における代謝および機能の解明とその臨床応用に関する研究
Project/Area Number |
07557242
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Section | 試験 |
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
西川 徹 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第3部, 部長 (00198441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 琢磨 山之内製薬 中央研究所 第一創薬研究所, 主任研究員
和田 圭司 国立精神, 神経センター・神経研究所・疾病研究第3部, 部長 (70250222)
高坂 新一 国立精神, 神経センター・代謝研究部, 部長 (50112686)
高橋 勝宣 国立精神, 神経センター・神経研究所・疾病研究第3部, 室長 (40183850)
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Keywords | 内在性D-セリン / 脳 / NMDA受容体チャンネル / グリシン開裂酵素 / グリシン代謝 / L-セリン代謝 / 非NMDA受容体D-セリン結合部位 / 哺乳類 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、哺乳類脳の内在性D-セリンの代謝および機能とその病態を明らかにする目的で、ラットとヒトの脳においてD-セリンの分布、放出、結合部位、取り込み機構、ならびに薬物負荷・発達・疾患による濃度の変化などを検討し、次のような結果を得た。1)内在性D-セリンの変化が生ずるヒトの疾患を初めて見いだした。つまり、グリシン開裂酵素系p蛋白遺伝子の点突然変異によりグリシン開裂酵素系活性を欠く、非ケトン性高グリシン血症患者の大脳皮質において、D-セリン濃度が対照群(非代謝性疾患)の30%程度まで激減するこがわかった。グリシン濃度は、これまでの報告通り著明に上昇していた。さらにラットを用いた実験で、1)グリシン開裂酵素系活性阻害薬であるcysteamineを投与により、D-セリン含量の減少とグリシン含量の増加が見られること、2)グリシン負荷により脳内のグリシン濃度を高めたラットの大脳皮質ではD-セリンも増加すること、などを明らかにし、ギリシン開裂酵素系またはその関連分子が脳内D-セリンの合成または濃度調節に関与する可能性を提唱した。2)In vivoでL-セリンとD-セリンの代謝が相互に関連していることを示唆する初めての所見を得た。すなわち、新生仔ラットにL-セリンを投与すると、大脳皮質、小脳の双方で、L-セリンだけでなくD-セリンも著明に上昇することがわかった。一方、D-セリンを投与した新生仔ラットの脳でもD-セリンとL-セリンの濃度が増加した。3)NMDA受容体グリシン結合部位の選択的括抗薬存在下で、^3H-D-セリン結合実験を行い、ラットの脳シナプトゾーム画分において、NMDA受容体グリシン結合部位以外にも、D-セリンが高親和性・飽和性を示す結合部位が存在することを見いだした。この結合活性は、大脳皮質および小脳で高かったが、末梢組織にはほとんど検出できなかった。様々な物質による競合実験から、これまでに知られていない結合部位であることが示唆され、内在性D-セリンに対する新たな受容体の可能性がある。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Nishijima K,Kashiwa A,Hashimoto A,Iwama H,Umino A and Nishikawa T.: "Differential effects of phencyclidine and methamphetamine on dopamine metabolism in rat medial frontal cortex and striatum as revealed by in vivo dialysis." Synapse. 22. 304-312 (1996)
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[Publications] Yoshida Y,Umino A,Takahashi K and Nishikawa T.: "Evidence for N-methyl-D-aspartate receptor-mediated increse in norepinephrine utilization in the prefrontal coerex of unanesthetized rats." Brain Res.744. 156-160 (1997)
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[Publications] Iwama H.Takahashi K,Kure S,Hayashi F,Narisawa K,Tada K,Mizoguchi M,Takashima S,Tomita U and Nishikawa T.: "Depletion of cerebral D-serine in non-ketotic hyperglycinemia : possible involvement of glycine cleavage system in control of endogenous D-serine" Biochem Biophy.Res.Commun,. (in press).
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[Publications] 西川徹: "GABA系「躁うつ病-mood disorders」薬理・生化学" Clinical Neuroscience. 14. 404-407 (1996)
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[Publications] 西川徹: "D-SerineとNMDA受容体" 神経精神薬理. 18. 955-958 (1996)
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[Publications] 西川徹: "精神疾患とシナプス「シナプス」" Clinical Neuroscience. 14. 955-958 (1996)