1997 Fiscal Year Annual Research Report
内在性D-セリンの脳における代謝および機能の解明とその臨床応用に関する研究
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07557242
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Research Institution | National Institute of Neuroscience, NCNP |
Principal Investigator |
西川 徹 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第三部, 部長 (00198441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越谷 和雄 山之内製薬, 中央研究所・第一創薬研究所, 主任研究員
和田 圭司 国立精神, 神経センター・神経研究所・疾病研究第四部, 部長 (70250222)
高坂 新一 国立精神, 神経センター・神経研究所・代謝研究部, 部長 (50112686)
高橋 勝宣 国立精神, 神経センター・神経研究所・疾病研究第三部, 室長 (40183850)
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Keywords | 内在性D-セリン / 脳 / 細胞外放出 / 取り込み / グリア細胞 / GABA伝達系 / D-セリン合成 / 哺乳類 |
Research Abstract |
昨年度に引き続いて、主にラットならびにヒトの組織を用い、脳の内在性D-セリンの代謝および機能とその病態に関する研究を行った。! In vivo dialysis法で、ラット前頭葉皮質の細胞外D-セリン濃度が他の神経伝達系によって調節されることを初めて明らかにした。すなわち、GABA-A受容体拮抗薬であるbicucullineを前頭葉皮質内に潅流すると細胞外D-セリン濃度が低下し、この効果はGABA-A受容体作動薬存在下では認められなくなった。GABAーB受容体の拮抗薬、作動薬ともに、細胞外液中D-セリンを変化させなかったことから、内在性D-セリンの放出にGABA-A受容体が関与する可能性がある。“種々のヒト脳腫瘍組織においてD-セリン濃度を測定したところ、グリア系脳腫瘍に高い濃度で蓄積しているのに対して、末梢系細胞由来の脳腫瘍や神経芽細胞腫ではきわめて低かった。そこで、ラットグリオーマ由来の株化培養細胞であるC6細胞で、[3H]D-セリンの取りこみを検討した結果、C6細胞では温度依存性、飽和性で基質親和性Kmが約2.4mMの取り込み活性が検出された。この活性はNaイオン依存性であり、基質特異性は中性アミノ酸トランスポーターASCT2に類似していることから、脳内D-セリンがグリア細胞のASCT様のトランスポーターによって取り込まれている可能性が示唆された。♯昨年度までに、D-セリン代謝はグリシン開裂酵素系やL-セリンの代謝系と関係することを明らかにしてきた。本年度はさらに、in vivoにおいて、グリシン開裂酵素活性を阻害した条件下でも、L-セリンを負荷すると脳内D-セリンが増加することがわかり、D-セリン代謝はグリシンおよびL-セリン代謝系からそれぞれ独立に影響を受ける可能性がある。以上の所見は、脳の内在性D-セリンが、1)シグナル伝達系を構築して既知の神経伝達物質と相互作用をもち、脳機能の発現や調節に関与すること、2)D-セリンシグナルの不活性化にグリア細胞が重要な役割を果たすこと、3)脳内で合成され濃度調節を受けること、などをさらに支持している。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] Iwama H,et al.: "Depletion of cerebral D-serine in non-Ketotic hyperglycinemia:possible involvement of glycine cleavage system in control of endogenous D-serine" Biochem Biophy.Res Commun,. 231. 793-796 (1997)
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[Publications] Matoba M,et al.: "Characterization of 5,7-dichlorokynurenate-insensitive [3H]D-serine binding to synapto-somal fraction isolated from rat brain tissues" J Neurochem,. 69. 399-405 (1997)
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[Publications] Tanaka K,et al.: "Epilepsy and exacerbation of brain injury in mice lacking the glutamate transporter GLT-1" Science. 276. 1699-1702 (1997)
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[Publications] Takahashi K,et al.: "In vivo evidence for the link between L-and D-serine metabolism in rat cerebral cortex" J Neurochem,. 69. 1286‐1290 (1997)
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[Publications] Kure S,et al.: "A subtype of pyridoxine dependent epilepsy with normal CSF glutamate concentration" J Inherited Metabolic Disease,. (in press).
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[Publications] Sato D,et al.: "Developmetal changes in distribution patterns of phencyclidine-induced c-Fos in rat forebrain" Neurosci Lett,. 239. 21-24 (1997)
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[Publications] Hayashi F,et al.: "Uptake of L-and D-serine in C6 glioma cells" Neurosci Lett,. 239. 85-88 (1997)
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[Publications] 西川 徹他: "薬物依存「シナプス-可塑性」" Clinical Neuroscience. 94. 1158-1161 (1997)
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[Publications] 平岡秀一他: "「精神分裂症の動物モデル」特集『精神分裂症の最先端』" ブレインサイエンス. 8. 399-407 (1997)
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[Publications] 西川 徹他: "「現状と展望」特集『精神分裂症の最先端』" ブレインサイエンス. 8. 365-368 (1997)
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[Publications] 西川 徹: "KEY WORD 1997-‘98 精神(「興奮性アミノ酸と精神分裂症」)" 先端医学社, 268(2) (1997)
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[Publications] 黒田安計他: "専門医のための精神医学レビュー‘98-最新主用文献と解説-(風祭 元監修)(「精神分裂症の生物学」)" 総合医学社(印刷中),
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[Publications] 黒田安計他: "「精神分裂症と気分障害の治療手順-薬物療法のアルゴリズム-」(佐藤光源,樋口輝彦編)(「抗精神病薬の作用機序」)" (印刷中),