1995 Fiscal Year Annual Research Report
脳循環障害および肺圧損傷を予防する人工呼吸器の開発に関する研究
Project/Area Number |
07557247
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
戸苅 創 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (50106233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 重澄 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (40179213)
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Keywords | 人工呼吸器 / 脳循環障害 / 肺圧損傷 |
Research Abstract |
新生児の呼吸障害に治療として人工呼吸が行われるが、現在、広く世界中で使用されている人工呼吸器は、Intermittent Mandatory Ventilation(IMV、間欠的強制換気)といわれる陽圧換気法であるが、特に未熟児などのfragile lungやDisease lungでは容易に肺胞の過伸展が生じ、いわゆるBarotraumaとして後に慢性肺障害を来すことが知られている。また、肺に陽圧を人工的に掛けた場合、胸腔内圧の上昇、ひいては脳循環障害を来すことも判明している。これら、脳循環障害と肺の過伸展の両者の予防が可能な人工呼吸器の開発がかねてより待たれていた。研究者らは、シミュレーション技法により、肺胞内圧を正確に算出しつつ、肺血管内の血流変化を計算することで、肺胞内圧と血流変化を同時測定しつつ換気する人工呼吸モデルの研究を行い、胸腔内圧の変動が無く、肺胞への圧損傷を最小とする全く新しい人工呼吸器の開発のための基礎的検討を行った。まず、新生児肺を、肺の拡張、収縮、気道内のガスの流れ、ガスの輸送、ガスの拡散などの物理現象が複雑に関与したバイオメカニクスのシステムとしてとらえ、肺実質の力学物性を弾性力学で、分岐気管内のガスの流れを流体力学で、気道の変形と肺循環の血流をレオロジーで、ガスの輸送と拡散を輸送拡散モデルで、各々新生児に特有な情報を入れることで数理モデルを作製した。作製された各物理現象の数理モデルを連立微分方程式でスーパーコンピューターを用いて演算したた。従来型の陽圧式人工呼吸器に、同時に胸壁の外側から作動させる陰圧式人工呼吸器を想定して胸壁外圧を与え、丁度、胸腔内圧がゼロとなるよう、また、換気量を従来型陽圧式人工呼吸器のみで運行させた場合と全く同等に保つよう各パラメーターを決定し入力したところ、従来の陽圧式人工呼吸器で与える陽圧は約三分の一に減弱させることに成功した。 この連成モデルで得られた結果をもとに、実際の動物(新生仔ブタ)を用いて、陽圧および陰圧式人工呼吸器のプロトタイプを試作の上実行したところ、シミュレーションで得られた値とほど同等の結果が得られ、まさに、脳循環障害を予防しつつ、肺圧損傷を軽減出来る人工呼吸器のモデル作成に成功した。
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