1996 Fiscal Year Annual Research Report
難活性尿失禁に対する機能的電気刺激による治療法の開発
Project/Area Number |
07557362
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
折笠 精一 東北大学, 医学部, 教授 (60001004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波間 孝重 東北大学, 医学部・付属病院, 助手 (70282069)
半田 康延 東北大学, 医科系研究科, 教授 (00111790)
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Keywords | 難治性尿失禁 / 機能的電気刺激 / 尿道括約筋 / 陰部神経交互刺激 / 疲労抵抗性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、陰部神経への機能的電気刺激(FES)を難治療尿失禁の新しい保存療法と位置付け、下部尿路組織の特性を考慮し、尿道括約筋の疲労抵抗性と瞬発力の両立を目指した効率的なEFS制御システムの開発にあるが、その過程で以下の結果を得た。1)尿道括約筋の収縮特性:雑種成犬の骨盤底筋(PFM)と尿道周囲横紋筋(PUS)の電気刺激による運動反応時間などの検討から、PUSは速筋優位でPFMは遅筋優位であり、両筋を同時に制御することで、遅筋の疲労抵抗性と速筋の瞬発力を両立させ得る可能性が示唆された。2)尿道閉鎖の周波数特性:エネルギー効率のより尿道の持続的弱閉鎖と瞬間的強閉鎖のための至適周波数を検討した結果、安定した弱閉鎖には最低20Hzが必要であり、強閉鎖は50Hz以上で可能と考えられた。3)FESによる長時間制御:耐疲労性に優れた弱閉鎖の刺激方法として、左右の陰部神経を位相をπずらして10Hzで刺激することで、尿道閉鎖の実効周波数を20Hzとした交互刺激法を立案し、20Hz同時刺激法と長時間制御を比較した。同時刺激に比較し交互刺激では終圧の絶対値はやや低値であったが、2時間刺激後にも刺激初期圧の60%以上を維持しており耐疲労性がみられた。さらに、長時間持続刺激中に腹腔圧上昇でトリガーした一過性刺激(50Hz)を印加した際の圧較差は、同時刺激下33cmH_2O±11.5に対し交互刺激下では163cmH_2O±75.1と有意に上昇しており、交互刺激下では長時間の弱閉鎖中でも尿道強閉鎖能が維持された。以上から、今回開発した両側陰部神経交互刺激に腹圧トリガーによる周波数変調を加味したFESシステムは、筋組成の異なるPUSとPFMを同時に制御し、見掛け上の実効周波数を上昇させて耐疲労性を獲得できるだけでなく、瞬間的な膀胱内圧上昇にも追随できる強い尿道閉鎖能を維持することが可能な刺激方式であり、難治性尿失禁の保存療法として今後臨床応用に値するものと考えられた。
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[Publications] 西沢正毅,波間孝重 他: "FESによる尿失禁防止のための長時間制御に関する基礎的検討" 日本ME学会東北支部大会講演論文集. 30・1. 11- (1996)
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[Publications] 波間孝重.折笠精一 他: "大膜様部尿道に対する陰部神経左右交互刺激の処理について" 日本神経因生膀胱学会誌. 7・1. 50-51 (1996)
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[Publications] 西沢正毅,半田康延 他: "FESによる尿失禁防止のための刺激方式に関する基礎的検討" 電子情報通信学会技術研究報告. 96・1. (1997)
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[Publications] 相沢正孝,波間孝重 他: "横紋筋性尿道括約筋の収縮特性に関する研究(圧-時間曲線による検討)" 日本泌尿器科学会誌. 88・3. (1997)