1996 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞認識機能と医薬包接機能を併せ持つスーパーアシアロ糖タンパク質モデルの開発
Project/Area Number |
07558212
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Section | 試験 |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤池 敏宏 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (30101207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 光昭 (株)ネーテック, 技術部長研究職
丸山 厚 東京工業大学, 生命理工学部, 助手 (40190566)
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Keywords | 肝細胞 / アシアロ糖タンパク質モデル / アシアロ糖タンパク質レセプター / PVLA(ガラクトースポリマー) / 高分子ミセル / ナノパーティクル / β-ガラクトース |
Research Abstract |
アシアロ糖タンパク質のモデルとして我々が設計・開発してきたPVLAはその両親媒性の分子構造ゆえに水中にて安定な高分子ミセルを形成する。その水相へ露出した糖鎖(βガラクトース)の肝細胞認識機能を有効に発揮できれば各種遺伝子、アンチセンスDNA、リボザイム等々を肝臓、特に肝実質細胞に選択的に到達させ遺伝子治療や細胞治療を施すことが可能となるものと推測した。実際に蛍光プローブや放射性ヨウ素(_<125>I)で標識したPVLAをラット尾静脈により注入してみると、1時間以内に肝臓組織に60〜70%もの量が到達し、しかも肝実質細胞に12倍以上の選択性(対非実質細胞)で取り込まれていくことが明らかになった。このようにPVLA高分子ミセルは通常迎撃されやすい網内系組織(RES;マクロファージ等の異物処理細胞からなる生体防衛システム網)をかいくぐり(RES回避)、高い効率で標的となる肝細胞にたどり着くことが確認された。ハイブリッド人工肝臓用コーティング材料の場合と同じように、PVLAはここでも文字通りたいへんよいアシアロ糖タンパク質モデルになっていることがわかる。しかも、分子ミサイルキャリアーとしてたいへん都合のよいことには、多くの医薬や蛍光プローブのように疎水性が高い化合物を共有結合させることなしにPVLAミセル水溶液にただ混合攪拌するだけでミセルの疎水性コアドメイン内に包接させうることも判明した。さまざまな医薬の肝細胞へのデリバリーが現在計画されている。最近、天然のアシアロ糖タンパク質そのものに、医薬を共有結合して肝ターゲティングしようという試みがなされているが、高分子ミセルの包接能力は天然には備わっていない特質であるし、大量生産性や品質管理のしやすさも新しい特徴である。 生分解性微粒子は、化学的安定性に乏しく、その表面を化学修飾することが困難である。また、微粒子表面への両親媒性高分子の吸着等による物理化学的修飾法では、修飾時の粒子の凝集性が問題とされている。本研究では、糖鎖などの機能性基を表面に配する生分解性微粒子の新規調整法を開発した。肝細胞機能を有するガラクトース糖鎖を有する両親媒性高分子(PVLA)を乳化剤として用いることにより、ワンステップで糖鎖を表面に高密度に有したナノパーティクルが調製できた。この調整法を用いることで、ナノパーティクルの分散安定性が向上し、また、レクチン特異性および細胞(肝実質細胞)特異性より、ナノパーティクル表面の糖鎖の認識性が保持されていることが確かめられた。この調製法を利用することにより種々の機能性分子を配したナノパーティクルが調製できると考えられる。
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[Publications] 原 万里子、樋口 真弘、箕浦 憲彦、大内 将吾、曹 鍾守、赤池 敏宏、樋口 亜紺: "LB法ならびに包括法により調製した固定化血清アルブミン膜による基質認識-D,L-トリプトファンに起因する円偏光二色性応答" 日本化学会誌. (5). 483-490 (1996)
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[Publications] 赤池 敏宏: "グルコース輸送体を介した細胞認識" 蛋白質核酸酵素. (41)「11」. 1582 (1996)
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[Publications] 丸山 厚,赤池 敏宏: "多糖コンジュゲートによるDNA特異性材料の設計DNA3重鎖安定化剤とDNAキャリアーへの展開" ファルマシア. (32)「11」. 1402-1405 (1996)
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[Publications] Atsushi Maruyama,Maiko Katoh,Tsutomu Ishihara,Toshihiro Akaike.: "Comb-Type Polycations Effectivery Stabilize DNA Triplex." Bioconjugate Chem.8(1). 3-6 (1996)
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[Publications] C.S.Cho,Y.Lleong,T.Ishihara,R.Takei,J.U.Park,K.H.Park,A.Maruyama,T.Akaike.: "Simple preparation of nanoparticles coated with carbohydrate-canying polymers.." Biomaterals. (18)「4」. 323-326 (1996)