1995 Fiscal Year Annual Research Report
大乗仏伝経典ラリタヴィスタラの研究(本文校訂及び和訳)
Project/Area Number |
07610023
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
外薗 幸一 鹿児島経済大学, 経済学部, 教授 (30099098)
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Keywords | 仏伝文学 / ラリタヴィスタラ / バガヴァッドギーター / 有神論の倫理 / 無我説 / 仏教倫理 |
Research Abstract |
本研究の課題である大乗仏伝ラリタヴィスタラの本文校訂と和訳のための基礎作業は、順調に進んだ。本年度(平成7年度)は、梵文写本の計11本、及びチベット語訳写本の計5本の単語分析を中心に、第15章から順次研究を進め、第21章までについて、梵文とチベット訳文とを対照して示したノート(30頁×42冊)を作成した。しかし、この研究の特徴は、単に写本を対照して原文を確定するというのではなく、写本調査と同時に和訳を作りながら、前後の意味を思想的に検討しつつ、文脈を逸脱しないように原文を校訂するところにある。それ故、文献学的研究にみならず、仏教の思想的研究を並行的に行う必要がある。そして、この場合、初期仏教から部派仏教を経て大乗仏教の思想が生まれてくるプロセスを、「ヒンドゥー教の思想・信仰の展開」との関連のもとに考察することが重要である。インド大乗仏教は、インド人の民間信仰である「輪廻説」や、ヴィシュヌやシヴァを崇拝する「有神論」の影響を受けて、「仏陀の絶対性・永遠性」や「信仰の純一性」を強調する傾向が強くなってくるが、ラリタヴィスタラにはその特色が顕著に現れている。このような問題意識のもとに、ヒンドゥー教の聖典である『バガヴァッドギーター』の思想的研究を行った(『鹿児島経大論集』第36卷3号所収)。また、初期仏教についても、その根本教義である「無我説」の思想的特徴についての論稿を発表した(同論集第36卷4号所収)。さらに、原文校訂と和訳に関する業績を第15章から順次発表していく予定であるが、その手始めに、第15章の最初の部分(8頁分)についての研究成果を発表した(同論集第37卷1号、平成8年4月発行予定)。
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[Publications] 外薗幸一: "一神教的有神論の倫理" 鹿児島経大論集. 36巻3号. 69-108 (1995)
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[Publications] 外薗幸一: "無我説の倫理" 鹿児島経大論集. 36巻4号. 343-382 (1996)
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[Publications] 外薗幸一: "ラリタヴィスタラの研究-本文校訂及び和訳(第15章-i)-" 鹿児島経大論集. 37巻1号(未定). (1996)