1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610025
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Gakuin University,Junior College |
Principal Investigator |
佐藤 悦成 愛知学院短期大学, 文科, 教授 (30167431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡島 秀隆 愛知学院短期大学, 文科, 助教授 (40221139)
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Keywords | 授戒会 / 引請師 / 結算簿 / 曹洞宗 / 臨済宗 / 勘合貿易 / 戒弟 / 禅宗 |
Research Abstract |
これまでの研究と、新資料についての現時点での知見を考え併せると、以下の点が明かとなる。 1.中世の特に曹洞宗寺院で盛んに開催される「授戒会」が宗派の勢力拡大に大きく寄与していた。 2.「授戒会」に参加する「戒弟」を引率する「引請師」は、当該地域周辺のみではなく、師僧との関係にさかのぼって各地域より参集していたことが判明した。ここに、師弟という縦の関係とともに、同門という横の関係も成立して、互助の関係が強固に結ばれていたことが確認された。 3.「授戒会」が寺院経済を潤していたことは確実であり、その収益が伽藍の修理、「戒弟」勧募のために各地を巡る僧侶の費用となっていた。歴代住職の出納帳にも当たる『結算簿』によりそれが確認できる。 4.従来、外護者の存在が宗派発展の基盤となっていたといわれていたが、『結算簿』による限り外護者の役割は従来の見解よりも小さいものであり、寺院の収入の多くは領地からの租税であったことが明かとなった。 5.室町時代になると、修行者は修行を完成させた後に「本貫地」に帰ることが多くなり、故郷において在地勢力を教化して帰依させ、寺院の建立、寺領の寄付を得て教線拡大の端緒としている。 今年度は、『結算簿』の解明を進めるとともに、「引請師」として登場する禅僧を各地に調査したが、その過程において臨済宗の展開には大きな特徴があることが明確になった。 それは、明との貿易の拠点となる港には必ず臨済宗の大寺があり、京都の本寺の現地事業所的役割を果していたことが明かとなってきた。勘合貿易の利益が臨済宗展開の経済的側面を支えていたと見ることができる。 この点については平成8年度に調査考察する。
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Research Products
(2 results)