1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 廣治郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40012984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 陽介 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (90262055)
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70152840)
竹下 政孝 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30163398)
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Keywords | 現代イスラム / 政治理論 / イスラム・リベラリズム / 民主化 / 政治体制 |
Research Abstract |
1.補助金交付内定の通知を受け、6月21日に研究方針を話し合う第1回会合が開かれた。最初に中村がイスラム・リベラリズムを概観する基調報告を行ない、多様なイスラムのあり方を無視した「原理主義」偏重の研究動向に強い疑問を呈した。その後の共同討議では、この問題提起を受けて共通の関心を培うとともに、秋まで各自が個別研究を行ない、9月以降報告と共同討議を行なう方針を確認した。 2.9月からは以下のような研究発表が順次行なわれた。まず、内藤が、イスラム政治思想史における、政治的正統性と民意との関係について報告。特に、現代フランス思想の影響を受けながらイスラム思想史そのもののデコンストラクションを測っているムハンマド・アルクーンの分析をもと、イスラムと民主主義との共存の可能性を検討した。ついで鎌田が、イラン・シ-ア派世界の近代における思想史的展開と今日のイスラム共和国体制における民意吸収のシステムについて論じ、竹下は、大衆動員組織としてのス-フィー教団が民意の代弁者として政治的にも無視できない力を持っていることを報告した。最後に中村が、エジプト法曹界の大御所、アシュマ-ウィーによる、イスラム法の民主的運用に関する議論について報告し、個別研究を終えた。 3.以上の個別研究の結果、当面の共同研究テーマとして、現代イスラム世界における民意吸収のための諸制度と、その現実の運用をめぐる諸問題について考察することとし、1月以降討議を続けている。討議の中では、現代イスラム大衆運動が、民主的諸制度に依拠しながら民主主義そのものを否定しかねないような主張を展開している点なども指摘されているが、このテーマは巨大なテーマでもあり、今後も私的研究会による研究を継続したい。成果は2〜3年後をめどに公表するつもりである。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 中村廣治郎: "al-Ghazzali" Routledge Encyclopedea of Philosophy. (1996)
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[Publications] 鎌田繁: "“Metemphychosis (tanasukh) in Mulla Sadra's Thought"" Orient. 30-31. 119-132 (1995)
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[Publications] 内藤陽介: "ムハンマド・アルクーン研究序説" 日本中東学会年報. 11. (1996)
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[Publications] 竹下政孝: "講座イスラーム世界4 イスラームの思考回路" 栄光教育文化研究所, 410 (1995)