1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610034
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋谷 治美 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (50126083)
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Keywords | 人間学 / 存在 / 自由 / 価値 / 疎外 / 偶然性 / 必然性 |
Research Abstract |
1.本年度は、本研究の「総合人間学の体系構想」のうち第1部「人間の原像」の第1章「人間の存在」と第2章「人間の自由」の研究に費やした。すでにそのアウトラインは1994年12月に上梓した「逆説のニヒリズム」(花伝社刊)において提示したのだが、この1年間はそれの一層の緻密化と、これに関連する知見(主に自然料学的な)の拡大に努力した。具体的には、ダ-ウィン「種の起源」を再読し、天文学関係の最新の知見を紹介した書籍を2冊読んだ。また〈人間の自由=目的定立実現活動(はかりごと)〉とする定義をより説得的なものにするために、脳生理学関係の入門書を1冊読んだ。 2.哲学的な文献としては、「人間の自由」に関しては、ニーチェの「力への意志」に展開されている〈偶然と必然〉に関する思索を勉強した。さらにホフスタッターの大-著「ゲーテル、エッシャー、バッハ」を読破したがこの文献はわたしの今後の思索に大きく資する成果を齎らしてくれた(機械論的・還元論的唯物論によって脳の断層論的・全体論的・目的的機能が十分に説明されうる見込みが高いということ)。他に社会人類学の分野で、ブリッチャード「ヌア-族の婚姻」とM.モ-ス「贈与論」の2つの高名な文献を読み、未開社会のノモスの実情の分析を通して現代に通じる人類普遍の〈ノモスとピュシス〉の対立とその「解決」の具体相を学んだ。他方E.ブロッホの「希望の原理」全3巻を3年ごしで読破し終えたが、この分厚い文献には共鳴するところが少なかったのは残念であった。その後これまた人間を論じるには基本的な文献の1つであるソシュールの「一般言語学講義」を読み進めている。 3.過去の人間学関係の文献としては、カントの「人間学」を再読するにとどまった。
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Research Products
(1 results)