1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋谷 治美 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (50126083)
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Keywords | 自由 / 価値 / ニヒリズム / 目的定立実現活動 / 言語 / 差異化 / 自己欺瞞 / はかりごと |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、(1)本構想第一部のうちの第二章「人間の自由」(2)同第三章「人間の価値」の解明であった。結果的には(1)が中心の一年であった。 (1)に関連して今年はヘーゲル、マルクス、ソシュール、メルロ=ポンティ、フ-コ-、ラカン、アドルノ等を研究した。主に、人間の目的定立実現活動(人間に可能な自由)には同一性を破却して差異化しようとする本質が潜んでおり、それがいずれ社会と歴史の場において如何に疎外、物象化となってあらわれるか、について見通しを得た。今年一番の収穫は、上記の本質と人間の言語能力とが密接に関連しているという点に一層の確信を得たことであった。この点で、以前研究したフロイトの精神分析およびデリダをベースにしてヘーゲル、フ-コ-、ラカン等の思想を加味した<人間的自由=言語=自己欺瞞>論を構想する手掛りを得た。本年度末に発表される研究論文「<くわだて>と<はかりごと>--人間的自由の本質の解明のために--」はその第一歩である。 (2)関連して引き続きニーチェを研究した。彼の最晩年の思想が(一部のひとの解釈とは異なって、やはり)既存の総ての実定的価値の根底的批判に立脚した、徹底した価値ニヒリズムであることを再度確信した。 上記の二点とは別に、カントの批判哲学がその底にニヒリズムを秘めていたと読めること、のアイデアを得た。今後の本研究の一つの柱としたい。 また「人間とは何か」という本研究の課題に答える一環として、シェイクスピアの作品分析を通して「呪いとは何か」を論じた。そのなかで、呪いと価値ニヒリズムとが密接に連関している様を明らかにした。
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Research Products
(2 results)