1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610034
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋谷 治美 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50126083)
|
Keywords | 人間学 / 価値 / 疎外 / 宗教 / ニヒリズム / 映画 / 親鸞 / 道元 |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、(1)(昨年度から継続して)本構想第一部第三章「人間の価値」の解明、(2)第二部「原像からの疎外とその克服の方途」の研究であった。 (1)に関しては今年はアリストテレス、カント、マリノウスキー、カイヨワ、H.アーレント,等を研究した。これに関連して「芸術とは何か」という視点から、カントの『第三批判』第一部も読みなおした。(2)に関しては、ニーチェ、ハイデガ-、メル口・ポンティ、ラカン、等を研究した。また、歴史とノモスとの関連という視角から、旧約聖書『イザヤ書』、ライプニッツ、ヘーゲル、ブロ-デル、等を研究した。他に、フッサール、脳の科学、女性の進化史についても総合人間学に資するべく研究した。 価値については、定言的価値と仮言的価値との(相対的)区別、両者の転倒としての疎外、諸価値の唯一の源泉としての目的定立実現活動の主体としての人間の尊厳、等について考察を深めた。また価値ニヒリズムとの関連で、歴史的名画から観てとれる<人間存在の無意味性>について学生向けにまとめてみた。 疎外に関しては、これまでの(へ-ゲル、マルクスを中心とした)研究蓄積の上にブロ-デルの「長期持続」の概念を接合しうるとの確信が得られたのは大きかった。個人の主観における疎外の形成にとって(土台と上部構造の不均等発展に加えて)歴史の時問のずれのもつ意味は大きいと思われる(さらにこれに宇宙史の観点も加味できるだろう)。宗教については97年1月にウィーン大学で集中講義として話した「親鷲と道元」を活字にした。疎外と宗教の密接な関係について『イザヤ書』から深い考察を得た。 研究の最終年度なので、年度末にこれまで得た成果を元に、総合人間学の体系構想の素案を文章化し冊子にする。
|
Research Products
(2 results)