1995 Fiscal Year Annual Research Report
他者論に関する基礎的研究-18世紀フランス思想史を中心に
Project/Area Number |
07610035
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
古茂田 宏 一橋大学, 社会学部, 教授 (80178376)
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Keywords | コンディヤック / 他者 / 独我論 / 言語 / モリヌ-クス問題 |
Research Abstract |
『人間認識起源論』と並ぶコンディヤックの主著『感覚論』(Traite′ des sensations,1754)、および最晩年の著作である『論理学』(Logique,1780)の読解をとおして、コンディヤック思想の変様を追跡した。『感覚論』においては、意識的に「他者」が排除されており--思考実験においてひとつひとつ感覚器官を付与されていく彫像は、一切言葉を使わない--、その徹底した独我論的構成が示す意味の検討に迫られた。また、自然的な感覚世界と言語(記号)を介した人間的な知覚との論理的断絶を強調していた『人間認識起源論』に対して、『論理学』においてはその連続性が強調されているように思われ、この三つの主要著作の連関をどうとらえるかという問題が浮上した。その意味で、当初予定していたコンディヤックと他の思想家との比較研究という作業以前に、コンディヤック自体の複雑さという新しい問題に直面している。さらに、18世紀フランス感覚論に大きな影響を与えたジョージ・バ-クリの『知覚新論』(New theory of vision,1709)の議論も、コンディヤックが深く介入したモリヌ-クス問題との関係で研究の視野に入ってきたが、バ-クリが独我論であるとの通説はこの著作に関する限り当たらないという印象を得た。それゆえ今後は、コンディヤックに大きな影響を与えたバ-クリ、そしてその対極と見なされるディドロ、そしてルソーといった人々の議論のなかにコンディヤックを置きなおしつつ、18世紀における他者の問題構成--その陰画としての独我論--を追跡したい。 なお、未だ萌芽的研究の段階で、上に内在した成果をあげるには至っていないが、この間に刊行した著書『醒める夢、冷めない夢--哲学への誘惑』の第一部「知覚の風景」、第二部「言葉の迷宮」において、コンディヤック『人間認識起源論』の議論のアクチュアリティを強調する紹介を行った。
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Research Products
(1 results)