『正義論』以降のロールズのカント主義

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07610036
• Research Institution: NIIGATA UNIVERSITY
• Principal Investigator: 長岡 成夫 新潟大学, 教育学部, 教授 (90134907)
• Keywords: ロールズ / 正義論 / 政治的リベラリズム / カント的構成主義

Research Abstract

本年度は、第一に1980年以降のロールズの諸論文と1993年の『政治的リベラリズム』を考慮しながら、ロールズのカント主義がどのような変化を示したか・どのような形態をとるに至ったかを検討し、第二に、政治的リベラリズムという立場の妥当性について各種の論評を参照しながら検討を行った。
第一について。1980年頃に主張され始めたカント的構成主義が、政治的レベルに限定されるに至った過程およびその理由をテーマとして検討した。「ロールズのカント主義:1980-1993:という形で発表した。変化の理由としては、共同体主義からの批判に答えようとしたものと解釈した。この解釈は、ロールズ自身は否定しているものであるが、多くの解釈者が提示しているものでもある。
第二の領域について主に検討したのは、(1)カント的構成主義という解釈の問題(構成主義的要素をカント倫理の中心的側面と考えるのが妥当かどうか)、(2)民主主義文化の直観を共有しない者をunreasonableと呼ぶのが妥当かという問題(政治的リベラリズムへの変更は、特定の道徳的立場を離れるためのものであるが寛容思想への反対者を拒否するためにはある程度の道徳的立場を主張せざるをえないのではないか)(3)そもそも『正義論』§41でのカント的解釈が妥当かという問題(Barryらは、『正義論』でのカント的要素は安定性の議論のなかでのみ重要とする)である。

Research Products

• [Publications] NAGAOKA,Shigeo: "Which Beings Deserve Ethical Consideration?-From the Sentence Criterion to the Life Criterion" Utilitas. 8.n.2. 191-204 (1996)
• [Publications] 長岡成夫: "ロールズのカント主義:1980-1993" 新潟大学教育学部紀要. 38.n.1. 57-71 (1996)