1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610049
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Prefectural University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
楢崎 洋子 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 助教授 (50254264)
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Keywords | 現代日本 / 声楽作品 / 三善 晃 |
Research Abstract |
歌曲、合唱曲を中心とする日本の声楽作品と、それらを対象とした研究的著作、および西洋音楽史における20世紀の声楽作品を対象にした研究論文を検討した結果、現在次のような進捗状況にある。日本の声楽作品を扱ったこれまでの研究は、おもに戦前の作品を対象にして旋律に日本伝統音楽の音組織を指摘するほか、旋律と言葉との関係については、日本語の高低アクセントが反映されていることに論及するにとどまっているのが確認される。一方、筆者が対象とする戦後の作品には、音高関係だけでなく、リズム、強弱法、テクスチュア、形式の諸局面に西欧前衛音楽の手法が取り入れられており、声のパートをもつ作品では、言葉の音の特性が前衛的手法による構造化を導いていることが想定される。たとえば、平成7年度の研究対象である三善晃の声楽作品では、戦前の作品のように伝統的な音組織を言葉の受け皿とするのでなく、言葉から直接、音高継起、リズム、テクスチュアの諸局面が導かれている。そのほか、言葉を反復させてその言葉を強調したり、あるいは同一の言葉を声部間で、音高、リズムにおいてずらしたり、重ねたりするといった、言葉のグル-ピングによる言葉の音響化もみられる。その音響化のプロセスには、日本伝統音楽における理論的特徴が反映されており、そこでの前衛音楽の諸手法は、西欧から導入されたというよりも、日本語の音の特性に由来することが認められる。次年度は、三善以外の作曲家の声楽作品も含めて、言葉の音響化と、言葉のグル-ピングによる音響化の諸手法を分類し、日本語と音楽の関係を系統化する。
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