1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610056
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
小川 勝 鳴門教育大学, 学校教育学部, 助教授 (60214029)
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Keywords | 先史岩面画 / 北東アジア地域 / 石膏型資料 |
Research Abstract |
フゴッペ洞窟の岩面刻画は、予備調査の結果、風化等による損壊が予想以上に進行していた。それゆえ、本年度は、これまでまったく調査されていない北海道開拓記念館所蔵の石膏型を記録分析したうえで、原作との照合作業を行った。その際、1970年刊行の考古学的報告書添付の画像部分の図面も参照したが、その作成者の過剰解釈による不正確な部分も多くあることが判明し、資料評価という点で、困難な問題に直面した。すなわち、本研究の資料としては第一次資料ではあるが既に損壊著しい<原作>と損壊以前の状態をある程度は残している<石膏型>、そして不正確な<報告書図面>の3種類が存在するのであり、それらをどのように評価して、よりありうべき<原資料>を構築してゆくかが大きな課題となるのである。今後とも上記3資料に加えて、現状の写真も分析してゆかなければならない。ところで、石膏型からは原作では確認できない刻画制作技法もある程度は復元可能であり、鋭利な制作画などを詳細に分析することにより、制作時の道具として、金属器の使用も想定すべきではないかと判断するに至った。これは、本研究の目的の一つである刻画全体の制作時期を解明するためにもに重要な問題であり、来年度以降においても綿密に考察しなければならないが、これも、原作以上に発見時の状態をよく残す石膏型という世界的にも貴重な資料を対象とできているためであり、その点が本研究の独自性の一端というべきところである。また、今年度には予定していた文献資料も順調に入手でき、北東アジアの先史岩面画伝統の中で、フゴッペ洞窟をどのように位置付けてゆけるのか、比較研究する基盤も整ってきたといえよう。
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