1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610058
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kanazawa College of Art |
Principal Investigator |
上田 恒夫 金沢美術工芸大学, 美術工芸研究所, 助教授 (00112491)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木戸 雅子 共立女子大学国際文化学部, 助教授 (10204934)
寺田 栄次郎 金沢美術工芸大学, 美術工芸研究所, 助教授 (80180082)
|
Keywords | ドクサラス / 芸術論 / ギリシア美術 |
Research Abstract |
当初の計画にしたがって、ドクサラス著「画論」の翻訳を始めた。底本に1871年のLambros版をもちい、随時1726年のアテネ国立図書館本も参照した。18世紀のドクサラスの文体と用語には、難解な箇所が少なくなく、また本研究とは別個に進めているディオニシオスの「エルミニア」の翻訳にも時間を費やしたので、予定していた分量をこなすまでには至らなかった。しかし守旧派のイコン画家のディオニシオスの著述を理解した上で、同世代の近代主義者ドクサラスの文業が正しく理解されることが再認識された(以上、上田と木戸が分担)。 平成7年夏にギリシアにおいてドクサラスの絵画作品を調査したが(費用別途)、ギリシアでもその作品目録はない上に、まとまった点数を所蔵するアテネ近代美術館へのアクセスは容易ではなかった。実現できたのはザキントス(ザンテ)島のキリエ・トン・アンゲロン教会の板絵《パントクラトール》一点のみであった。これはドクサラスが祖国独立運動に身を投じる以前に描かれたイコンであって、「画論」執筆を前後する時期の彼の油彩画とはジャンルも主題も異なるが、油彩画に方向転換する以前の彼の力量が相当なものであったことを示すとともに、イコン画家としての彼の出自が、一世紀前のクレタ派(ザキントス島のミハイル・ダマスキノスのイコン)にあることを物語っている(以上、上田担当)。平成8年度に再度アテネほかで、ドクサラスの油彩画を実見して、その文業の理解を深めたい(費用別途)。 このほか、平成7年度にはドクサラス、ディオニシオスと同時代の18世紀のギリシアイコンを実作にもとづいて各部分を復元模写した。その結果、ディオニシオスの「エルミニア」によって描いたかと思わせるほど、その技法が似ていることがわかった(寺田担当)。
|