1995 Fiscal Year Annual Research Report
最大エントロピー法に基づく心拍変動スペクトル解析の心理生理学的応用
Project/Area Number |
07610061
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
田中 豪一 北海道教育大学, 教育学部・札幌校, 助教授 (10167497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 幸展 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (40045539)
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Keywords | ストレス / 心拍 / 血圧 / 圧反射 / スペクトル分析 / 最大エントロピー法 |
Research Abstract |
本研究では、ストレス作業課題負荷中に見られる心血管反応の背景をなす自律神経調節に関して次の仮説を検証しようとした。すなわち、心拍変動中のLF成分(.04から.14Hz)は、10秒リズムと呼ばれる血圧のMeyer波に対して起こる迷走性圧反射の媒介によって出現する心拍変動である(仮説)。 実験1では男子大学生50名を被験者とし、安静、暗算予期、暗算負荷、回復の条件で心血管反応を測定した。実験2では男子大学生30名を被験者とし、暗算単独負荷条件と暗算に騒音負荷を加えた条件を比較した。実験3では、男女大学生40名を被験者とし、簡易自律訓練条件下で心血管反応を測定した。一心拍毎の心拍間隔および収縮期拡張期血圧を測定し、1分毎の変動に最大エントロピー法(MEM)スペクトル分析を適用した。圧反射感度(BRS)はシーケンス検索法により求めた。その結果、3つの実験を通して、心拍変動のLF成分のパワーは、血圧変動のLF成分のパワーと有意な正の相関を示した。これは個人内変動および個人間変動の両方で一貫して認められた。また、実験2では暗算単独条件に比べ、騒音追加条件では血圧および心拍変動のLF成分の有意な増加が認められた。実験3ではリラクセーション条件下で、両LF成分の減少が認められた。さらに、BRSと心拍のLF成分の間にも同様な有意な正の相関が認められたが、血圧のLF成分とBRSを説明変数、心拍のLF成分を目的変数とする重相関分析の結果には個人差が大きいことが判明した。個人差に対しては、BRS推定法の誤差(信頼性)や個人の生理的反応性などの要因が影響すると推測された。これらの諸要因の解明が次の課題と考えられるが、本研究の知見は概ね当初の仮説を支持するものであった。
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