1995 Fiscal Year Annual Research Report
潜在記憶成分と顕在記憶成分を分離するための記憶モデルの構築
Project/Area Number |
07610071
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小松 伸一 信州大学, 教育学部, 助教授 (50178357)
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Keywords | 潜在記憶 / 顕在記憶 / 再認記憶 / 過程分離手続き / 主観的評価手続き |
Research Abstract |
1 本研究は、意識過程と無意識過程が混在し合う記憶遂行の中から潜在/顕在記憶成分の純粋な寄与をいかにして推定するか、という問題を理論的・実証的な観点から解明することを目的としている。今年度は、理論的研究としてメタ分析を、実証的研究として健常成人を対象とした実験を行った。 2 メタ分析:処理の深さ・提示モダリティなど、潜在記憶をめぐる先行研究の中で取り上げられてきた各種独立変数の効果に関して、メタ分析を実施した。記憶遂行の中から潜在記憶成分と顕在記憶成分を分離するための手法として開発された「過程分離手続き」および「主観的評価手続き」のそれぞれに基づいて、潜在/顕在記憶成分への各種独立変数の寄与を検討した。この結果、推定の根拠となる記憶モデルの相違によって潜在/顕在成分への寄与の推定値が異なる場合と、モデルの相違に関わらず一致する場合があることを明らかにした。メタ分析の手法を用いて、既存の枠組みの問題点を解明することができた。 健常成人を対象とした実験:実証的研究として、健常成人(大学生)を対象に再認実験を行い、再認記憶遂行を規定する潜在/顕在記憶成分の推定を「主観的評価手続き」に基づいて試みた。独立変数として再認におけるβ基準を操作し、K(know)項目とR(remember)項目を区分する際の基準が記憶システムの質的な相違を反映するものであるのか、あるいは、確信度のような記憶痕跡の量的相違を反映しているにすぎないのかを実験の中で択一的に検討した。実験の結果、主観的評価手続きは、単なる痕跡強度の指標とみなすことはできず、質的に異なる記憶成分を分離しているという実験的証拠を得ることができた。しかし同時に、処理水準の効果に関して先行研究とは整合しない結果も得られ、主観的評価手続きに基づく推定が潜在/顕在記憶成分を真に反映しているとはみなすことができない可能性も示唆された。
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