1996 Fiscal Year Annual Research Report
潜在記憶成分と顕在記憶成分を分離するための記憶モデルの構築
Project/Area Number |
07610071
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小松 伸一 信州大学, 教育学部, 助教授 (50178357)
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Keywords | 潜在記憶 / 顕在記憶 / 再認記憶 / プライミング効果 / 主観的評価手読き |
Research Abstract |
本研究は、意識的過程と無意識的過程が混在し合う記憶遂行の中から潜在/顕在記憶成分の寄与を推定し、両成分の性質を解明することを目的とした。潜在/顕在記憶成分を推定する手法として、主観的評価手続き、病理学的解離、発達的解離の3つを用いた。主観的評価手続きに基づく検討では、健常成人を対象に符合化時の処理様式(読み/生成)を操作し再認実験を行った。この結果、被験者によるR(Remember)項目とK(Know)項目間の判断が確信度判断と相関を示すことを実証した。病理学的解離に基づく検討では、重篤な前向性健忘を呈するアルコール性コルサコフ患者を対象に、学習と検査間で刺激項目の表記を操作する実験を行った。この結果、潜在記憶検査と顕在記憶検査間で病理学的解離を証明した。すなわち、コルサコフ患者は統制群と比較して顕在記憶遂行において顕著な障害を示したのに対し、潜在記憶検査における遂行は統制群と同等であり、有意な表記固有プライミングならびに表記独立プライミングを確認した。発達的解離に基づく検討では、小学生と大学生、精神遅滞者を対象に符合化時の処理様式(読み/生成)を操作し潜在/顕在記憶検査を実施した。この結果、読み/生成処理は、潜在記憶遂行に対して発達的解離を引き起こすことを実証した。つまり、読み処理が課された場合には、潜在記憶遂行に発達差が認められなかったのに対し、生成処理の場合には、年齢と知能要因を関数とする発達差を確認した。これら一連の実験に基づき、潜在記憶には2種類の異なる成分が媒介しているという仮説を唱えた。その1つは、前向性健忘や年齢などの被験者変数とは独立であり、主に知覚的処理に依拠している成分であり、もう1つは、年齢や知能水準と相関しており、主に意味的処理に依拠する成分である。
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Research Products
(1 results)