1995 Fiscal Year Annual Research Report
持続的注視によるパターン認知機能の低下と回復過程に関する研究
Project/Area Number |
07610082
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
行場 次朗 九州大学, 文学部, 助教授 (50142899)
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Keywords | パターン認知 / 漢字認知 / テクスチャー知覚 / 顔の表情認知 / 持続的注視 / 順応 |
Research Abstract |
1.テクスチャーの消失と再現過程の分析については、種々のテクスチャーパターンを様々な偏心度で提示し消失までの時間を測定した。偏心度の増加に比例して消失時間は短くなったが、ランダムドットのテクスチャーより、線分テクストンからなるテクスチャーのほうが偏心度の影響を受けにくかった。持続的注視により消失した領域には、外領域と同じ要素が補充されるように知覚されるが、これには、領域の境界を処理する系(BCSと領域内の特徴を処理する系(FCS)を仮定するGrossbergの理論が適用できる見通しがえられた。 2.漢字パターンのゲシュタルト崩壊と回復を規定する要因の分析では、ある漢字パターンを持続的注視(約25秒程度)させた後、それと同一構造をもつ漢字パターン、同一部分をもつもの、異構造・異部分をもつものを認知するまでの反応時間を測定し、短時間注視の場合との比較を行った。持続的注視後には、同一漢字のみならず、同一構造をもつ漢字にも認知時間の遅延がみられ、その効果は、注視後、15秒以内持続した。漢字の大きさや傾き、字体などを変化させ、同様な実験を行えば、漢字が脳内でどのように表現されているかについて、重要な示唆がもたらされるものと期待できる。この研究成果の一部は「心理学研究」誌に掲載予定である。 3.顔パターンの持続的注視が表現認知にあたえる影響の分析については、例えば、笑い顔を持続的注視した後、中性顔や悲しみ顔を見た場合のように、順応パターンやテストパターンの表情を様々に変化させ、表情の認知時間を測定した。特に、快・不快次元に関連のある表情を持続的注視した後で、認知時間に遅延がみられた。表情認知を司る系には、主に快・不快次元に関わる表情処理系と、主に覚醒・鎮静次元に関わる表情処理系があり、もっぱら前者の処理系においてだけ、持続的注視による順応効果があらわれると想定することができた。
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[Publications] 二瀬由理・行場次朗: "持続的注視による漢字認知の遅延-ゲシュタルト崩壊現象の分析-" 心理学研究. (印刷中).
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[Publications] 二瀬由理・行場次朗: "持続的注視後の漢字認知にあらわれる遅延効果" 日本心理学会第59回大会発表論文集. 681- (1995)
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[Publications] 行場次朗: "テクスチャーパターンの消失・再現過程の分析" 九州心理学会第55回大会発表論文集. 27- (1994)