1995 Fiscal Year Annual Research Report
サル海馬傍回皮質における対象認知記憶と空間認知記憶の機能分化について
Project/Area Number |
07610097
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
靱負 正雄 (財)東京都神経科学総合研究所, 医学心理研究部門, 主事研究員 (20113491)
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Keywords | 側頭葉内側部 / 後部海馬傍回皮質 / 空間認知記憶 / 場所遅延見本合わせ課題 / 対象認知記憶 / 色遅延見本合わせ課題 / ニホンサル |
Research Abstract |
ヒトやサルの側頭葉内側部の損傷によって生ずる視覚性記憶障害には対象認知記憶障害と空間認知記憶障害が認められる。側頭葉内側部には、海馬体・扁桃核をはじめ、海馬傍回諸野と嗅周皮質が含まれている。これまでに得た解剖学的知見から、海馬傍回と嗅周皮質の視覚性記憶過程に対する関与が異なる(機能分化)ことを示唆されることから、本研究では空間認知記憶と対象認知記憶に対する海馬傍回・嗅周皮質摘除の効果を行動学的に検討することを目的とする。本年度は、ニホンサルを用い、空間認知記憶と対象認知記憶に及ぼす後部海馬傍回皮質(TF野+TH野)の摘除効果を調べた。空間認知記憶として場所の遅延見本合わせ課題を、対象認知記憶として色の遅延見本合わせ課題を用い、後部海馬傍回摘除による成績を非摘除正常群の成績と比較した。(1)空間認知記憶課題の結果:非摘除正常サル(3頭)は、再学習時にほぼ完全な保持を示したのに対し、後部海馬傍回摘除群(3頭)は術後再学習に平均510試行要し、障害を示した。再学習後の遅延テストでは、30・60・120秒の各遅延について、正常群がそれぞれ75%、69%、61%の平均遂行率を示したのに対して、後部海馬傍回摘除群は、67%、56%、55%の平均遂行率を示し、その成績は正常群よりも低かった。摘除群の術前の遅延テストでは70%、61%、54%の平均遂行率を示した。個体内の摘除前後の成績の比較ではほとんど変わらない成績を示す動物がいることから、遅延テストにおける障害はほとんど見られなかった。(2)対象認知記憶課題の結果:術後、色の遅延見本合わせ課題を課した所、後部海馬傍回摘除による障害は学習達成試行と遅延テストにおいて見られなかった。本結果より、後部海馬傍回は、側頭葉内側部損傷による空間記憶障害には関係するが、対象認知記憶障害には関与しないことが示唆された。
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