1995 Fiscal Year Annual Research Report
発達障害・自閉症児の愛着形成過程に関する基礎的研究
Project/Area Number |
07610100
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古塚 孝 北海道大学, 教育学部, 助教授 (30091490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陳 省仁 北海道大学, 教育学部, 助教授 (20171960)
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Keywords | 自閉症 / 愛着 / 療育 |
Research Abstract |
本年度は相談中の自閉症児Aの2歳1カ月から3歳3カ月までの治療経過を追ってみた。 2歳当初、母親は「この子は自分の要求をはたすことに一生懸命で自分勝手で、コミュニケーションをする気がない、情緒的交流の実感が無い、私がいてもいなくても困らないようだ」と報告していた。 即ち、愛着関係といえるものは成立していなかった。 2歳4、5カ月 母親に抱っこ、膝に座ることで不安を解消すると判断できた。その後、不安・恐怖が「掃除機」に対して生じることを発見した。電気掃除機への不安の消去を試みる中で不安を取り去ってくれる母親への気づきが生じるように心がけた。また、抱っこの要求の時に、母親が彼の親を無視した要求から公共的な要求行動に変換することをめざした。徐々に彼は、要求満足が前よりもスムースにいかないことから、母親を他者として気づき、公共的ルールに従って要求することが出来るようになった。 2歳7カ月 彼は固執的であったミニカ-を並べる遊びを母親とする中で、ミニカ-の名前に特定して発語が可能になった。この時期、母親は情動の発現(うれしさ、不満、怒り)は見られるが、情動を共有できないと報告した。 2歳10カ月 大きな音を出す車に恐怖を示し、母親にしがみつくことができた。母から離れると車に恐怖し、母に抱かれていると興味と喜びを示した。車を動かしてくれとセラピストに要求し、急いで、母親にしがみつき、その車が動くと大喜びをしたのである。情動表現と愛着行動は随伴的に発達すると思われる。加えて、予期に反したことが生じると笑いが生じるようになった。語彙数は順調に増大したが、感情表現の言葉が無い、気持ちがこもらない、言葉遣いがおかしいと母親からの報告があった。 3歳1カ月 彼が不安になったとき、母親以外の人に抱きつくことで不安を解消出来るようになった。母親との会話では、母の多大の努力でかろうじて会話になるが、2人だけにしか通じ得ない特定的なものであった。しかし、自発的興味の出現と軌を一にして、興味の共有が見られはじめた。そして、相手の情動表現に注目することが可能になった。 結論: 愛着成立は可能だが、それに到るには多くの知的機能の開発が必要とされるとおもわれる。次年度は、理論研究を行いまとめるつまりである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 古塚 孝: "障害児療育相談における親援助の実際" 北海道大学教育学部紀要. 70. 71-78 (1996)
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[Publications] 日下優実子: "自閉傾向を呈する2才男子の発達過程と遊びの発展のための試み" 北海道大学教育学部紀要. 70. 79-90 (1996)
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[Publications] 内田彰夫: "ある自閉傾向女子の対人関係・言語における発達経過" 北海道大学教育学部紀要. 70. 91-97 (1996)