Research Abstract |
まず,先行研究をレビューし知見の整理と問題の絞り込みを行う中で,アイディアの創出を行う第1過程とアイディアを融合・収斂させて精緻化する第2過程とに分類する「集団討論よる創造的問題解決過程の2段階モデル」を考案した.次に,創造性を客観的に測定する方法について様々な角度から検討を行い,純粋に創造性を測定するのに有効とされてきた“unusual use"課題(レンガ,電球等の今までにない利用法を考案する課題)の妥当性を検証し,採用することにした. 続いて,先述した2段階モデルの第1段階である創造的アイディアの創出過程に焦点を当て,それに影響を及ぼすもののうち,現実の組織場面との対応を考慮して,アイディアに対する評価過程の有無および集団成員の異質性の高低の二つの変数を取り上げ,その効果性を280名の被験者の参加を求めて,実験室実験によって検討した.その結果,評価過程の存在は,集団による創造的なアイディアの創出にネガティブな影響を及ぼすこと,さらには,成員の異質性のうち,性差が創造的なアイディア生成に重要な影響を及ぼす反面,成員の専門分野の異質性の高さは有意な影響を及ぼさないことを明らかにした.ただし,成員の異質性が及ぼす影響に関しては,課題の内容による相互作用効果の大きさも予測され,さらに詳細な検討を継続中である.これらの知見は,日本社会心理学会,日本グループダイナミックス学会で口頭発表するとともに,岡山大学文学部紀要に論文発表した. 現在,創造性の測定課題について,組織状況のアナロジーを考慮したものを新たに開発し,実験での採用の妥当性について詳細な実証的検討を進めている.今後は,創造的アイディア生成を促進する条件の検討をさらに進める一歩で,アイディアを練り上げ精緻化していく第2過程の特性を詳細に記述する取り組みを推進していく.〈776字〉
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