1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610142
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
波多野 誼余夫 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (60049575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大浦 容子 新潟大学, 教育学部, 教授 (40092671)
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Keywords | 創作 / 知識生成 / 熟達化 / 料理 / 調理法 / 理解活動 / 類推 / 試作 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に収集した資料のより詳細な分析を行うとともに、個々の創作を超えた知識生成の過程と、その根底にある熟達化に関する考察と実験を、主として料理について行なった。とくに、与えられた、未知の料理(魚介類のムース)から、いかにしてその調理法を再現しうるか、そのさいに料理に関する知識がいかに関与するか、単独の場合とくらべ二人一組での調理法の再現にはどのような特徴があるか、また実際に再現された調理法に従って試作する過程で調理法がいかに洗練されるか、などを中心に検討した。その結果、次ぎの諸点が明かになった。 (a)この調理法の再現という実験課題は、しばしば調理法全体を構成する個々のステップの有望な候補を互いに協調させつつ選択する、という理解活動をひきおこす。できあがった料理を味わう過程で、それに含まれる原材料(例えば魚介類、生クリーム)、それに加えらるべき処置(まぜて滑らかにする、固める)が示唆される。したがって、これらを一貫した調理法に統合することが実際の課題となる。 (b)原材料の識別や加えらるべき処置の選定においては、参加者の知識による変異が大きい。フランス料理に関する知識に乏しい参加者は、とうふやかまぼこといった、日本料理に言及することが観察された。類推は科学的推論ばかりでなくこのような日常的推論においても有用である。 (c)二人一組での調理法の再現は、より多くの有望なアイディアを生み出すが、それが必ずしも適切に選択、採用されるとは限らないため、より成功的であるとはいえなかった。これに対し、試作は、動機づけの面からも、おおいに効果的であった。ただしここでも参加者の知識の影響は大きい。
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