1996 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の戦争体験の人生における意味と老年期の適応に関する研究
Project/Area Number |
07610154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seitoku University Junior College |
Principal Investigator |
長田 由紀子 聖徳大学短期大学部, 講師 (70172781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 久雄 東京都立医療技術短期大学, 一般教養科, 助教授 (60150877)
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Keywords | ライフイベント / 太平洋戦争 / 回想 / 高齢者 / 自我統合 |
Research Abstract |
本研究全体の目的は、高齢者が自己の戦争体験をどのように人生に位置づけているかを調べ、その捉え方と適応の関係を検討することである。昨年に引き続いて本年度は、高齢者を対象とした質問紙調査の分析・発表および面接調査を行った。留置法を用いた質問紙調査の結果、最終的な分析対象者は60歳〜85歳の473名(男性267名、女性206名)となり、回収率は92.2%であった。前回以降の結果および発表については、1.戦争に関する回想行動および戦争観について、各22の質問を因子分析した結果、回想に関して寄与率がもっとも高かったのは「つらい体験の回想」因子であった。また、戦争観について男女間で若干異なる因子構造がみられた。これらの結果は、平成8年度における日本心理学会第60回大会にて発表した。また、2.実際にどのような被害を受けたかという客観的な被害状況と、自分は戦争の被害者と感じるか否かの主観的な被害観との関係を検討した結果、被害状況と被害意識との間には高い相関関係が見られたものの、全くの一致はしなかった。男性に比べ女性の方が、被害状況に関わらず被害意識が高い傾向が見られた。これらの結果は、同年度の日本老年社会科学会第38回大会にて報告した。さらに、3.戦争体験を回想することが、戦争観や現在の適応にどのように関係しているかを検討した結果、戦争体験を思い出すことは、戦争の否定的影響について意識化させる一方で、戦争の意味づけの成功につながる可能性が示唆された。また、意味づけに成功している者の適応度は高かった。以上の結果は、平成9年3月29日からの日本発達心理学会第8回大会にて発表の予定である。本年度はさらに、対象者の中から承諾を得た者から20数名を選び出し、面接調査を試みた。実際に1時間程度の面接の中で戦争体験の回想を依頼し、その前後の心理的変化を調べた。また内容の分析から、戦争体験の意味づけが行われてきた過程について検討した。
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