1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610170
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松井 克浩 新潟大学, 人文学部, 助教授 (50238929)
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Keywords | 農業後継者 / 仲間集団 / 農業生産組織 |
Research Abstract |
本研究では農業後継者集団の存在状況に光をあてるために、新潟県頚域地方、山形県庄内地方、宮城県栗原地方の事例集団をピックアップし、資料収集とメンバーへの聴き取り調査を行ってきた。平成7年度は、新潟県柿崎町の「いぶきの会」を重点的に取りまとめた。 1975年に地域の農業青年によって設立された「いぶきの会」は、20年後の今日に至るまで存続し、地域農業の発展を支えている。地域の兼業化が進む中で、こうした農業青年のグループが世代交代を繰り返しながら存続できた秘密は何だろうか。第1の理由は、このグループが関係機関の働きかけによって形成されたのではなく、当事者の必要性に強く根ざして作られたことである。集落で農業を営む同世代の若者がほとんどおらず、農業経営者としての自分の将来像も明確に描けない状況のなかで、地域に根づいて農業を志した少数の若者たちにとって、「仲間」をもちいたというのはまさに切実な欲求だった。 「いぶきの会」の存続と発展を可能にした第2の理由は、このグループが「水田作業受託部」を結成し、仲間集団の性格とともに農業生産組織としての実態を獲得したことである。数年間の活動で醸成された仲間意識と信頼関係にもとづいて、ゆるやかでフレキシブルな組織形成と、個別経営の拡大が可能になった。 こうしたグループに参加していることは、個々のメンバーが農業者として成長していく上で大きな意味をもった。すぐれたライバルとして仲間を意識することが、技術力や経営感覚を磨く上で大きな刺激になった。それのみでなく、同世代の仲間の存在それ自体が、困難な状況の下で農業を続けていく支えになっているのである。
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